2019 Fiscal Year Research-status Report
ストック型住宅を実質化するために必要とされる人間・環境条件の探究
Project/Area Number |
18K02202
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
柳瀬 亮太 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (10345754)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 昌洋 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (10528756)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 既存住宅 / 外観 / 屋根形状 / 開口部 / 長期優良住宅 / 印象評価実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
「良質で継続性のある住宅」を実質化し、未来の住み手に対しても魅力的であり続けるために必要な空間構成要素を探究するため、1)重要伝統的建造物群保存地区(岩手県・秋田県)、木造住宅密集地域(東京都)、日本初の大規模住宅団地(千葉県)、住宅寿命が比較的長く、世界的にみて不動産事情が急激に変化してきている地区の住宅地(カリフォルニア州)を巡検、2)既存住宅の外観評価に影響する要素(主に屋根形状と開口部の面積)について長野県内を中心とする標本調査、3)標本調査の結果をふまえて、戸建て住宅の外観(主に開口部の面積)を画像加工によって段階的に変化させる実験刺激を作成し、被験者に統制した条件下で提示することで印象評価データを抽出した。最終的には、全てのデータを統計処理し、その内容を分析・考察した。前年度と同様、研究分担者と協力して巡検に臨み、建物の外観要素だけでなく、内部の構造的側面に関わる要素についても記録し、把握した。カリフォルニア州では、郊外に点在する比較的古い住宅を主に対象とした。標本調査については、学生の協力をえて数多くの事例(築年数だけでなく、屋根形状、開口デザインやサッシのデザインに留意)を収集した。続いて、標本調査で取集した数多くの事例から予備的な調査を通じて30軒を選出し、上述したように印象評価実験を実施した。 その結果、以下の知見が得られた。1)入母屋屋根は伝統的で高級、全般的に好まれて遺したいと評価されるが、購入意欲は低い。陸屋根と片流れ屋根は構造性能及び環境性能は高いと推測されたが、バランス良く評価され、購入意欲が高いと推察されたのは切妻および寄棟屋根であった。2)開口部と構造的強度との関係性への意識は全体的に低く、評価に明確な相関は見られなかった。3)比較的広い開口部が好まれると推察された一方、新しいと感じられる住宅は比較的狭い開口部を有する住宅であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記述した通り、1)実質的に長期に渡って存在する既存住宅および建築に関わる知見を巡検などによって渉猟し、2)既存住宅の外観評価に影響する要素(主に屋根形状と開口部の面積)について長野県内を中心とする標本調査、3)戸建て住宅の外観(主に開口部の面積)を画像加工によって段階的に変化させた実験刺激を評価させる印象評価実験を実施できた。 昨年度の実験にて得た結果については、国内学会および国際会議にて発表し、今後の活動につながる貴重な意見を収集できた。また、今年度の成果については学内の研究センター報告会では予定通りに発表できたが、社会情勢の影響で学外発表は次年度以降に先送りとなる。 以上の進捗内容に鑑みて、本研究の目的を達成するにあたって「おおむね順調に進展している」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はおおむね順調に進展しており、研究の推進方策に関わる大きな変更は生じない予定である。今年度までの成果を省みて、新たな調査もしくは実験が必要と判断された際には、その手続きを追加する。ただ現時点では、学会大会などでの発表と同様に、それらの実施は困難であると予測される。研究期間の最終年度でもあり、今年度までに収集した資料および実験データを総合的に分析・考察し、機会があれば積極的に発表するとしたい。基本的には当初の研究スケジュールに則って、住宅の長期的な維持を実現する要件の資料化を念頭に置いて活動する予定である。
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