2019 Fiscal Year Research-status Report
高齢者住宅入居者の再転居を防ぐ「住まい」と「生活支援」に関する研究
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18K02240
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
村田 順子 和歌山大学, 教育学部, 教授 (90331735)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 智子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (20197453)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 住宅型有料老人ホーム / 居住の継続 / 看取り / 小規模 / 生活支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
要介護期に再転居を繰り返さない住環境整備について明らかにするために、昨年度実施した小規模住宅型有料老人ホーム(以下、ホーム)へのアンケート調査結果から、退居理由では医療機関への入院に次ぎ死亡が多くみられ、小規模ホームが終の棲家として機能している場合もあることが把握できた。そこで、居住の継続を可能とする「看取り」に焦点をあて、2019年度はアンケート調査の再分析、およびアンケート調査の対象県の2市から定員10人前後の小規模ホームを4ヶ所ずつ(計8ヶ所)選定し、訪問調査を実施した。 アンケート調査より、直近の1年間で入居者の死亡退居があったと回答したホーム77件を対象に看取りを可能にすると考えられるホームの運営体制として5項目、①ホームに看護師常駐、②併設施設に看護師常駐、③在宅療養支援診療所との協力・連携関係、④夜間の介助・介護、⑤日中の職員比、及び⑥定員規模を取り上げ、看取りを可能にする要件を検討した。その結果、④、⑤、①、③の順で看取り実施に寄与しているとの示唆を得た。また、定員規模が大きくなるにつれて未実施率が実施率を上回ることを把握した。しかし、今回の分析は直近の1年間に限っているため更なる調査・分析が必要と考える。 訪問調査を実施した8ヶ所のうち、看取りを実施しているのは6ヶ所だが、3ヶ所は医療的処置が必要になると退居となる。「看取り」のレベル分けが必要であろう。看護師常駐は3ヶ所だが、在宅医・訪問看護で対応可能とのことだった。ほとんどのホームで介護保険で不足するケアを無償で提供しているが、日中入居者がデイを利用するため特段問題とされていなかった。入居者との関係やケアの面では10人未満の定員が望ましいが、経営面ではリスクが大きいこと、人手不足(欠員補充が困難)が課題としてあげられた。 看取り実施からみたホームの空間や地域性に関する考察などは次年度以降の課題とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、2019年度は主に、『居住の継続を可能にしている「高齢者住宅」の事例調査』を予定していた。要介護期の再転居を防ぎ居住の継続を可能にするためには、自宅から移り住んだ先での「看取り」実施の有無が重要であると考えた。前年のアンケート調査より、人口規模の小さな都市において住宅型有料老人ホームから介護施設等への再転居が少ないことから、地方都市に設置されている定員が10名程度の小規模な住宅型有料老人ホーム8ヶ所を訪問し、「看取り」の実施状況についてヒアリング調査を行い、看取りを可能とする要件について検証を行うことができた。 また、「住まい」については、殆どが新築であるため高齢化対応への特段のニーズは見られなかったが、同一建物でデイサービスが実施されている場合、デイサービスの実施場所と居住場所との位置関係について、また、小規模であるため居住者の居場所が限られてしまうこと、居室と水回り空間との位置関係について改善の必要性があることなど、小規模ホームの空間的な課題が把握できた。既存の住宅等を利用する場合、ホーム開設当初に改修を実施し、高齢者対応を行っているが、廊下幅や階段、段差など要介護状態の高齢者の生活には不向きな点が多く、改修費が嵩んでしまうことも確認できた。 比較のための『都市部の「高齢者住宅」への訪問調査』の実施は、地方都市への訪問調査で旅費が嵩み、予算不足のため実施が叶わなかった。しかし、当該年度の研究目的は概ね達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に引き続き、2020年度も訪問調査を実施する予定であったが、新型肺炎の感染拡大により住宅型有料老人ホームへの訪問調査実施は困難であると考えられる。訪問調査が実施できなかった場合、ホームでの看取りについてのアンケート調査実施の実施を検討する。特別養護老人ホームでは看取りについての研究が散見されるが、住宅型有料老人ホームではこれまでに実施されておらず、実態と実施可能な要因分析を行うことは、高齢者住宅の整備のあり方を考えるうえで意義のあることだと考える。
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