2020 Fiscal Year Research-status Report
高齢者住宅入居者の再転居を防ぐ「住まい」と「生活支援」に関する研究
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18K02240
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
村田 順子 和歌山大学, 教育学部, 教授 (90331735)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 智子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (20197453)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 住宅型有料老人ホーム / 居住の継続 / 看取り / 生活支援 / 地域性 |
Outline of Annual Research Achievements |
住宅型有料老人ホーム(以下、ホーム)からの転居を防ぐには、「終の棲家」としての機能が求められる。2019年度の訪問調査から「看取り」の実施要件について検討を行ったが、限られた範囲での小規模ホームを対象としていた。そのためこの結果をもとに、2020年度は対象を広げたアンケート調査を実施した。ホームは、高齢化や人口密度、介護施設等の整備状況などの地域の実情を反映して設置・運営される側面があるため、地域特性を考察するために調査対象地域を[都市]と農山村部や過疎地域を含む[地方]でほぼ同数となるよう調査対象府県を抽出した。有効回収数は605票(有効回収率24.9%)、そのうち[都市]は333票、[地方]は258票、地域不明が14票であった。 調査結果より、調査対象の83%がこれまでに看取り実施の経験があり、特に[都市]では90%と多いことが明らかとなった。規模や職員配置、看護体制、居室面積や設備で地域差がみられ、特に、「在宅療養支援診療所」との協力・連携は[都市]では半数近くが連携しているが[地方]では3割と地域差が顕著だった。 看取りの実施には、看取りに対する意識も影響を与えると考えられる。ホームで最期を迎えたいという希望があった場合の対応(「ホームで最期を迎えられる」:[都市]62%、[地方]43%)や、地域の中でのホームの役割についての考え(「終の棲家」:[都市]84%、[地方]63%)に関して地域差がみられた。 看取り実施面からみた空間整備の課題については、原則個室のため特に問題はないとするホームが多かったが、お見送り時の動線やEVの狭さなどが課題としてあげられていた。 前年度の訪問調査では、小規模ホームの方が入居者との関係が濃密なため、ハード・ソフトの整備が不十分でも心情面から看取り実施に至る実態が把握できたが、今回の調査では客観的なホームの実態からの分析ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
要介護期の再転居を防ぐには「看取り」の実施が欠かかせず、「看取り」実施のための要件を明らかにすることは重要であるという考えから2019年度は訪問調査と2018年度に実施したアンケート調査の再分析により小規模ホームの「看取り」の実施要件について検討を行った。しかし、限られた調査対象であったため2020年度は、前年度の結果を踏まえたうえで「看取り」の実施要件をより明確にするために、調査対象地域を[都市]と農山村部や過疎地域を含む[地方]でほぼ同数となるよう調査対象府県を抽出しアンケート調査を郵送により実施した。調査票の送付は9府県・2425票、有効回収数は605票(有効回収率24.9%)であった。 その結果、ホームの規模、立地の偏りの少ない対象から回答を得ることができ、これまで研究対象としてきた地方の小規模ホームを全体の中で位置づけることが可能となった。予定していた訪問調査は実施できなかったが、大規模調査の実施によりホームの「看取り」実施の地域特性を把握することができたことは、本研究の遂行にとって有益であった。調査結果の更なる詳細な分析を今後実施し、居住の継続に影響を与える「看取り」実施の要因を明らかにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では、2021年度は訪問調査を予定していたが、コロナの状況次第では実施が困難と考えられる。そのため、2020年度に実施したアンケート調査をより詳細に分析し、必要があれば補足調査を実施し「看取り」の実施要件を明らかにするとともに、残された課題である地域との関係について明らかにする調査を実施する。 また、アンケート調査の回答ホームから、訪問調査の受入れに好意的なホームもあったため、状況を見極めながら可能な範囲で訪問調査を実施する。
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Causes of Carryover |
コロナの感染拡大を受け国際学会の延期により海外渡航費として計上していた旅費が使用できなかったため。訪問調査をアンケート調査に変更し、有益な結果を得ることができた。2021年度は訪問調査で明らかにする予定であった地域との関係については、コロナの感染収束の状況次第では、アンケート調査に変更し実施する。
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