固体系室内空気汚染物質の飛散挙動の解明とその計測評価方法の標準化に関する研究

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K02254
• Research Institution: Shinshu University
• Principal Investigator: 木村 裕和 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (80359372)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: 固体系室内空気汚染物質 / 飛散挙動 / 拡散挙動 / 床材 / アレルギー性疾患 / ハウスダスト

Outline of Annual Research Achievements

基本的に研究計画書に記載の内容で研究を進めている．今年度は，再現性や定常性が確保できない歩行実験による計測・評価に関する研究は一旦休止し，模倣ハウスダスト（固体系室内空気汚染標準物質）の作製方法と床面（試料）からの模倣ハウスダスト（固体系室内空気汚染標準物質）の発生，拡散を再現，評価できる促進型試験機の考案に取り組んだ．
固体系室内空気汚染標準物質の作製については，JIS L 1919（繊維製品の防汚性試験方法）に規定の標準汚染物質なども参考にしながら昨年度に引き続きポルトランドセメントや天然物質であるピートモス，培養土の前処理条件や試薬として市販されている珪藻土，はくとう土，活性炭素，流動パラフィン等との混合割合や混合粉砕条件が明度や色相に与える影響について研究を進めている．来年度も詳細な研究を実施し，粒度などについても検討を加え，実際のハウスダストに近似した居住空間への拡散性を示す模倣ハウスダスト（固体系室内空気汚染標準汚染物質）の提案を行いたい．
促進型試験機の考案については繊維製床敷物に特化した摩擦を伴った動的荷重試験機あるいは汚れ試験機を援用できる見通しである．現段階では繊維製床敷物用汚れ試験機を活用することが有力な手段となりそうであるが，試験装置を試作し，試作試験機による実験データ等を十分に検討しながら取り組みを進めて行く．
なお，最終年度には成果を整理し，関連学会等で発表することを計画している．
これまでの実績としては，本研究に強く関連する日本産業規格（JIS）である繊維製品の防ダニ性に関する試験方法（JIS L 1920）の国際標準化に成功し，その規格票がISO 21326　Textile-Test method for determining the efficiency of products against house dust miteとして発効されている．

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究実績の概要に記載した通り，今年度は歩行実験方法の検討は休止したが，促進型試験機による再現性，定常性の高い試験方法の開発と，模倣ハウスダスト（固体系室内空気汚染標準物質）の作製方法の開発に関する研究を進めている．歩行実験は再現性，定常性に問題があり，実験方法として確立することは極めて困難である．歩行に代わる促進型の試験室試験機による評価が必要であると考えており，それの考案に取り組んでいる．具体的には床面付着粉塵の評価に繊維製床敷物用促進型汚れ試験機あるいは繊維製床敷物に特化したロータリー形動的荷重試験機を援用すること，標準汚染物質そのものの飛散量評価に自動乳鉢を利用することを検討してきた．今のところは繊維製床敷物用促進型汚れ試験機を利用する方法が有力であると考えている．
また，これと並行してアレルギー性疾患のアレルゲンと言われているダニの死骸片やダニの糞の大きさに相当する粒径5μm～10μmを多く含む模倣ハウスダストの作製方法を検討している．これについては，現在流通している各種固体系標準汚染物質を活用することも視野に入れ，それらの分析的研究も行ってきたが，室内空気汚染に特化した標準汚染物質の提案が必要であるものと考えている．この模倣ハウスダスト（固体系室内空気汚染標準物質）の作製に関する検討は比較的順調に進んでいる．実際のハウスダストに近似した固体系標準汚染物質の作製方法を確立し，提案したい．

Strategy for Future Research Activity

今後は，再現性，定常性の高い促進型試験室試験機の考案を精力的に進め，居住空間に飛散，拡散するハウスダストを適切かつ促進的に評価できる試験方法を提案したい．同時にこれにはこの試験に特化した固体系標準汚染物質の確定も必要であると考えている．試験方法の検討と並行して現在取り組んでいる培養土，ピートモス，はくとう土，珪藻土，ポルトランドセメント，活性炭などからなる標準汚染物質の開発を進める．適切，合理的な模倣ハウスダスト（固体系室内空気汚染標準物質）を考案したい．
また，今年度は関連学会での研究発表等も行い，本研究の最終的目標である室内空気汚染物質の飛散，拡散挙動の解明とその計測評価方法の標準化というゴールを見据えて研究を進めてゆく．

Causes of Carryover

実験条件の探索段階であり実験設備の導入等は当初の計画より遅延している．また，新型感染症の拡大の影響もあり，当初予定していた学会発表等に変更が生じた．今後，円滑な予算の執行に努める．