2018 Fiscal Year Research-status Report
塩味増強に効果を与えるうま味の相互作用と咀嚼時の味成分溶出率との関係解明
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18K02257
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
石川 匡子 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (80315598)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 塩味増強 / 味の相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
生活習慣病予防に減塩が推奨されているが、塩分摂取量の過剰制限は、塩味だけでなく料理の味自体が薄味になり、食感の低下も引き起こすことから、十分に食生活改善運動としては浸透していない。塩に対するうま味の添加は、塩味を強く感じさせ、少ない塩分量で満足させる効果があると言われている。また、食品の食感は、咀嚼に伴う唾液への味物質の溶出度合に影響を与える。そこで本研究では、うま味がもたらす味や食感への効果を、理化学分析によって明らかにすることを目的とし研究を行った。H30年度はモデル食品として寒天を対象にし、実験を行った。うま味物質として、グルタミン酸にさらに甘味アミノ酸を添加したものを利用した。いずれのうま味物質を添加した場合でも味増強を引き起こすが、塩分量によって味増強効果が発揮される甘味アミノ酸の濃度は異なることがわかった。水溶液では塩味・うま味・甘味、それら3つの味のバランスが味増強に影響を与えるが、モデル食品では同程度の味のバランスでも効果が認められないものもあった。水溶液とモデル食品では味の持続時間が大きく異なっており、味増強には味のバランス以外の要素も関与すると考えられる。また、食品の硬さによって咀嚼時のモデル食品の崩壊度や味成分溶出量が異なり、味強度の違いへとつながることが、ヒト咀嚼試験(官能評価、圧力計測など)や機器による咀嚼モデル試験(物性測定、成分分析、味覚センサ測定などを利用した理化学分析)結果から示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H30年から2年間では、モデル食品を対象とし、ヒト咀嚼試験や咀嚼モデル試験から最も塩味が強く感じられる「塩味とうま味の濃度組成」「浸透度合」「食品の硬さ」を明らかにすることを目的としていたが、概要に報告したように概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
R1年度は、引き続きモデル食品を対象として検討を進めていく。日常生活で食事をする際、食品は種類や形態によって咀嚼時の崩壊の様子は様々であり、それに伴う味物質の溶出も異なると考えられる。寒天以外のモデル食品についても検討を進める。
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Causes of Carryover |
H30年度は学会参加費を計上していたが年度内の発表ができなかったことにより、差額が生じた。R1年度は、タンパク質やアミノ酸、有機酸などを含んだ様々なモデル食品を想定しており、食塩と呈味アミノ酸のみを含んだモデル食品よりも味覚センサ膜への負担が大きくなると予想される。残金は、味覚センサ膜ならびに味測定溶液前処理試薬消耗品購入費に充てたい。また、R2年度の研究である実際の食品を想定して、より応用性の高い電極の作製や、分析用消耗品の購入へ当てる予定である。
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