2019 Fiscal Year Research-status Report
給食の食塩相当量の低減化を目指す献立構成要素の品質における基礎資料の構築
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18K02260
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
名倉 秀子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (80189175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 ひろみ 東洋大学, 食環境科学部, 教授 (00300004)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 品質管理 / 献立 / 食塩相当量 / 汁物 / 主菜 / 食塩濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
給食の料理の食塩相当量について、計画で示す量が提供時に増減するかを確認し、その変動要因を把握することを目的とする。そのため、汁物(根菜汁、清汁)、主菜(フライ、煮魚)、副菜(お浸し)について検討を行った。汁物は、基礎的なデータ把握のために、回転釜(30L)、寸胴鍋(20L)を用い、水量を変え、沸騰まで、沸騰後弱火で加熱継続約60分、蓋の開閉時の蒸発率を1年間にわたり測定した。また、材料の下処理時の付着水率、片栗粉添加の影響、蒸発率、食塩濃度を計測した。主菜は、冷凍魚の煮物について、調味液に浸漬する時間、調理後の重量変化、食塩濃度を計測した。副菜は、ほうれん草のゆで後の絞り率とだし割醤油の浸漬による重量変化や食塩濃度を計測した。 汁の加熱による蒸発率は、季節性が認められ、冬季の蒸発率が夏季を上回り、調理室内の湿度との関係を明らかにした。室温と蒸発率には、関係がなかった。また、大量調理用の鍋容量の10%以下は蒸発率が高いため、鍋容量20%以上の汁量が純使用量として適切な量と示された。さらに、汁量は1%片栗粉添加により、汁の保温効果がみられたが、蒸発率にはとろみの影響が少なかった。汁物の食塩濃度の変動の要因は、加熱による蒸発率10%程度、材料の洗浄時の付着水率が抽出でき、出来上がり重量と食塩相当量の変動が把握された。主菜の煮魚は、冷凍魚に含まれる食塩相当量が、ロットにより異なり、下処理前に食塩濃度の把握が必要とされた。魚の調味液浸漬は、約10分から2時間と浸漬時間が長くなると、調理後の煮魚の重量減少が大きく、食塩濃度が高くなる傾向が示された。副菜のお浸しは、4~5月、6~7月に収穫されたほうれん草を用い、ゆで後の調理重量変化、絞り率、だし割醤油浸漬時の脱水に2種類の差が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き、献立を構成する料理として、食塩相当量が最も多いと推測される汁物と主菜を中心に、調理に伴う食塩相当量の変化と給食提供までの保温条件を合わせて、実験的な大量調理を実施し、基礎的データの把握を行った。 その結果、献立計画時の汁物の食塩相当量は提供時に増加傾向が示され、その要因では、調理室の湿度などの自然環境の因子が抽出された。実験施設のある首都圏において、湿度の低い冬季は、夏季より汁物の蒸発率が高いことが明示された。主菜は、給食でみられる冷凍魚の使用を試み、加工処理時に食塩添加される材料があることが明らかになり、料理に含む食塩相当量の標準化のための調理工程において、材料の食塩濃度の確認の必要性が明示された。副菜では、季節を問わず流通される野菜は、旬と端境期の調理法が異なることも明らかになった。また、副菜に用いる葉物野菜の収穫時期による違いなど、材料の選択を含めて、実験時期の調整の必要性が示された。通年とおしての実験を繰り返すことにより、様々な要因の抽出、確認ができ、次年度以降の調理実験時期とその時点での標準化された調理工程の作成につなげる可能性が見いだされた。これらのことから、概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、主菜は、冷凍魚を使用したフライと煮魚について、精度を高めるために繰り返し実験を実施し、栄養成分分析による栄養量(食塩相当量)の把握を試みる。また、揚げ物のフライは、食材の調理工程における食塩添加量を低く抑えることが可能であるが、食卓でかけるソースなどの食塩相当量の把握は、人を対象とした実測値が得られていない。給食の製造品質として、食塩相当量を把握し、低塩味の品質として提供しても、食塩相当量の摂取はソースにより多くなる可能性が推測できる。そこで、これらについて推測量の把握を試みる。その場合は、料理の塩味として心地よい味の官能評価が求められることから、研究倫理委員会への研究申請を行い、認可された後に実験を実施する。また、あんかけの料理の検討のために、粘性率と食塩濃度の官能評価についても、実験的に検討を実施する。 汁物の食塩相当量は、加熱、保温中の蒸発率、食材の付着水率、調理実験の季節的な把握が明示されているため、これらをまとめて関連学会へ発表報告する。 各料理について、繰り返しの実験により標準化された調理工程を得た後、栄養成分分析を行い、食塩相当量の保持率を把握する。さらに、献立における食塩相当量の分布図の作成に着手し、全体を考察し、関連の学会に発表、報告を行う。
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Causes of Carryover |
主菜の料理については、冷凍魚の食塩濃度の把握などの料理の食材選択を中心に実施したため、大量での実験の回数が少なく、食材料費および栄養成分分析の費用が低く抑えられた。次年度は、主菜料理の標準化された調理工程の作成のために、食材料費や栄養成分分析費用に、使用する計画である。また、フライにかけるソースの量を測定するために、官能評価用の費用が発生するため、これらの費用に充てる。 汁物に対しては、基礎的なデータを繰り返し実験を年間とおして実施したため、実験の回数は多いが、費用は低くなった。食材の洗浄による付着水について、複数回の実験を実施すし、これらに対して、栄養成分分析を実施する予定である。これらの食材料費と分析のための費用として充てる。
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Research Products
(8 results)