2019 Fiscal Year Research-status Report
氷温域を利用した食肉の長期熟成過程中の生菌数およびタンパク質成分の変化
Project/Area Number |
18K02264
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
細見 亮太 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (20620090)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 熟成 / 氷温 / アミノペプチダーゼ / カテプシン |
Outline of Annual Research Achievements |
この肉類熟成中のペプチドの生成には、カテプシンL、BおよびHが作用し、遊離アミノ酸の生成には、中性に至適pHを有するアミノペプチダーゼCおよびHが主に作用している。一般的にプロテアーゼなどの酵素の活性は温度に影響を受ける。そのため、氷温およびチルド熟成中にこれらのプロテアーゼ活性がどの程度働いているのか不明である。そこで本年度は、食肉の熟成処理中に遊離アミノ酸およびペプチドの生成に関与すると考えられているカテプシンL、BおよびH、アミノペプチダーゼCおよびHについて、氷温(-1℃)およびチルド域(+4℃)での活性の相違について評価した。 試料は豚胸最長筋を用い、酢酸緩衝液(pH 5.5)またはトリス塩酸緩衝液(pH 7.2)を加えて、ホモジナイズした。これを遠心分離後、中層を粗酵素液として、カテプシンL、BおよびH、アミノペプチダーゼCおよびH活性測定に使用した。氷温区でのカテプシンL、BおよびHの活性(pH 5.5)は、チルド区と比較して、それぞれ81%、77%および73%になった。一方、氷温区でのアミノペプチダーゼCおよびHの活性(pH 5.5)は、チルド区と比較して、それぞれ31%および24%となった。昨年度、豚肉の氷温での長期間の熟成処理は、チルドでの熟成処理よりも一般生菌数の増殖を抑制するが、遊離アミノ酸および総ペプチドの生成はあまり抑制しないことが示されている。しかし、今年度得られた氷温でのアミノペプチダーゼCおよびH活性は一般生菌数の抑制率よりも高かった。これらの結果から、氷温熟成処理中の遊離アミノ酸量の生成は、熟成温度の違いによるアミノペプチダーゼCおよびH活性の相違から説明することはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の実施予定であった、食肉の熟成処理中に遊離アミノ酸およびペプチドの生成に関与すると考えられているカテプシンL、BおよびH、アミノペプチダーゼCおよびHについて、氷温(-1℃)およびチルド域(+4℃)での活性の相違についてデータを得た。そしてチルドおよび氷温熟成処理中の遊離アミノ酸量の生成の相違は、熟成温度の違いによるアミノペプチダーゼCおよびH活性の違いから説明することができないことがわかった。このように2019年度実施予定であった研究項目についてデータが得られている。一方、予測していたメカニズムとは異なる結果が得られているが、異なる仮説を立てることができており、その実験方法の検討も出来ていることから、「概ね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
肉を-1.5℃に保存することで、リソソームが開裂し、内部のプロテアーゼの放出が生じやすくなるという報告が得られている。今後は、豚肉の粗酵素液を、遠心分離により、総ホモジネート画分、ミトコンドリア画分、サイトゾル画分、リソソーム画分に分画し、各画分についてカテプシンL、BおよびHとアミノペプチダーゼCおよびH活性の測定を行う。また、チルドおよび氷温熟成した豚肉の食味性についても評価を行う。
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