2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K02273
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
及川 英二郎 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (80334457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田代 美江子 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40297049)
渡辺 大輔 埼玉大学, 教育機構, 准教授 (00468224)
艮 香織 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (10459224)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 性教育 / ケアの倫理学 / 科学・人権・自立・共生 / セクシュアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は引き続き文献調査とヒアリング調査、授業実践の研究と、性教育の背景にある思想的状況について検討を行った。文献調査については山本直英・高柳美知子・村瀬幸浩の文献に加え、金子由美子の文献を収集した。ヒアリングでは、金子由美子の性教育実践とライフヒストリーについて計2回、のべ5時間ほど実施したほか、村瀬幸浩の授業実践に関する追加調査を行った。これまでに実施したヒアリングのうち、まだテープ起こしをしていなかったものについては、全て業者に依頼して完了した。テープ起こしの成果については、随時公表していくつもりだが、まずは村瀬幸浩のヒアリング成果を、本人からの希望により、「村瀬幸浩論」としてまとめる準備を進めている。1980年代の時代状況や性教育実践の傾向をふまえ、2021年度には分担研究者と紀要論文として共同執筆する予定である。授業実践については、分担研究者を中心に、ひきつづき足立区タンポポ中での性教育実践を検討したほか、『季刊セクシュアリティ』100号での渡辺大輔論文・艮香織論文として過去の性教育実践の分析を行った。 性教育実践の思想的背景については、田代美江子論文がこの間の研究動向を整理しているのに加え、同じく『季刊セクシュアリティ』101号に、性教協の「科学・人権・自立・共生」という標語の成立過程を論じている。その他、1980年代の性教協における「同性愛プロジェクト」の動向を追った若手研究者による博士論文の報告会も企画した。 『季刊セクシュアリティ』100号・101号の編集過程には本研究の関係者が全員関与しているが、特に「自立・共生」という標語については、ともすれば「依存」を排除した「自立」が想定されるなか、それはリベラリズムに特有の誤謬であることを批判するフェミニズムの「ケアの倫理学」に着目している。今後、社会運動としての方向性を考える上で重要な切り口である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスのパンデミックにより、ヒアリングをはじめ、共同研究者との意思疎通や、授業実践の研究が遅滞している。特に授業実践については、家族の事情もあり、研究代表者が直接参観することができなかった。本年度はヒアリングのテープ起こしなどで経費を使用したが、旅費の支出額にも反映されているとおり、研究論文を共同執筆できるほど打ち合わせが充実しているわけではなく、また、ヒアリングを受けた側から「逐語録」としての公表ではなく「論文」に組み込んでの公表を望む希望もあり、ヒアリング成果の公表には予想以上に手間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は引き続き文献調査とヒアリング調査、授業実践の研究と、性教育の背景にある思想的状況について検討を行う。文献調査とヒアリング調査については第1世代から第2世代以降に拡大するほか、地方サークルの動向なども視野に入れたい。また、あわせて「村瀬幸浩論」の執筆を進める。授業実践の研究については、分担研究者を中心に、ひきつづき足立区タンポポ中での性教育実践を検討する。他の学校でも授業実践研究を行いたいが、コロナの動向次第でもある。なお、2021年から研究代表者が、他の分担研究者3人が関わっていた『季刊セクシュアリティ』の編集委員に加わったこともあり、ヒアリングの公表について遅滞している部分を、同誌編集に反映させる形でシフトさせていきたいと思う。すでに同誌102号には、朝鮮学校における性教育実践の課題についてヒアリング調査を行い、その結果を掲載する予定である。 性教育実践の思想的背景については、「ケアの倫理学」を踏まえた検討を継続するほか、植民地支配や「従軍慰安婦」問題なども視野に入れて、性教育実践において、ともすれば欠落しがちな要素について検討を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナのパンデミックによりヒアリングによる謝金と、打ち合わせなどによる旅費の使用が大幅に滞ったことが原因である。次年度は、コロナの状況にもよるが、ヒアリングの頻度をあげること、遠隔地に聞き手が赴くか、遠隔地から話し手を招くかして、性教協の地方サークルの動向を調査することで旅費や謝金を消化すること、また、「村瀬幸浩論」の執筆にともない、打ち合わせの頻度をあげるほか、新たな資料収集に務めるなど行う予定である。
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Research Products
(28 results)