2020 Fiscal Year Research-status Report
ヘーゲル弁証法からみたデューイ探究理論の再評価とその現代的意義に関する研究
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18K02276
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松下 晴彦 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (10199789)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヘーゲル / 探究理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の中心に、デューイの探究理論の形成過程におけるヘーゲル哲学、特にその形而上学や哲学研究の方法としての弁証法の影響について、文献研究、資料研究の収集と精査により明確化するという課題があった。令和2年度はコロナ禍の状況から、海外調査を断念し、研究機関の附属図書館を通じたオンライン検索と電子ジャーナル、ライブラリーインターローンのサービスを利用しつつ、上記の課題に取り組んだ。令和2年度の成果としては、国内での学術活動の拠点である日本デューイ学会の編纂によるデューイの『民主主義と教育』の出版100周年を記念した学術図書の企画と執筆に参画することができ、その1章を担当した。『民主主義と教育』の全体構造と分析するとともに、本書が、デューイにとってヘーゲル哲学から後期の自然主義的な哲学へ移行する分岐点にあったと想定し、これを自然化された論理学として捉えるとともに、さらにその底流には形而上学的な諸観念の再定式があったのではないかと論じた。より具体的には、『民主主義と教育』において、頻繁に使用される二元論批判(精神と身体、行為と知識、権威と自由、手段と目的、資本と労働、教養と社会効率)や、伝統的な形而上学的術後のプラグマティズム的な用語への翻案について、事例を提示しながら分析した。一般に、プラグマティズムの哲学に形而上学という伝統的な哲学感をみるのはやや挑戦的な評価の仕方であることから、伝統的古典的な哲学の潮流におけるデューイ哲学の位置づけと脱構築的な20世紀的な萌芽的な再評価との両側面から、引き続き慎重な吟味を心掛けていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究課題の遂行には、米国南イリノイ大学でのデューイとその関係者の書簡、講義録などの史資料の収集が不可欠であるが、一昨年に計画していたものが滞り、さらに昨年度も渡米する機会を得ることができなかったことから、研究計画の見直しをしている。研究最終年度においては、手元にある研究資料を丹念に分析しまとめていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題遂行の中心となるデューイの講義ノートについては、オンラインで公表されているものを中心に分析し、また活字化されている研究資料を整理しマッピングすることで、デューイ思想の展開の中にヘーゲル哲学の影響の程を精査していく予定である。また本研究のオリジナルな観点は、デューイ哲学へのヘーゲルの影響が初期の形成過程のみならず、デューイ思想の形成の後期にも及んでいるのではないかという観点であり、これらの諸点について、既存の史資料、また21世紀に入って展開されているデューイ研究者による再評価の傾向なども視野に入れて研究を遂行していく予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度に予定していた海外での資料収集がコロナ禍の拡大により中止となったため、予定していた旅費等が次年度使用として繰り越された。2020年度に予定していた同目的の出張旅費、また海外で開催の学会での成果発表について2021年度で実施の予定である。
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