2023 Fiscal Year Research-status Report
カナダの大学院における教育専門職向け学位プログラムの教育効果に関する調査研究
Project/Area Number |
18K02283
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
平田 淳 佐賀大学, 学校教育学研究科, 教授 (90361005)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | カナダの大学院 / 教育実践家向け学位プログラム / M.Ed. / Ed.D. |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の実績としては、①8月に日本教育学会第82回大会において「カナダのM.Ed.・Ed.D.プログラムに関する一考察-日本の教職大学院との比較の視点から-」を発表し、②カルガリー大学、ブリティッシュ・コロンビア大学、トロント大学オンタリオ教育研究所のM.Ed.・Ed.D.プログラムに関する論文を執筆した。また、③9月にはトロントでの現地調査を実施した。 ①の学会発表は、その時点までに行った本プロジェクト研究の中間まとめとして行ったものであり、各大学における教育実践家向け学位プログラムの内容を検討した上でいくつかの特色を抽出し、それらを分析の視点として設定した上で日本の教職大学院の現状を分析し課題を展望した。 ②の論文執筆においては、上述の諸大学の関連プログラムを詳細に検討し、その特色や課題を検討した。そこでは、特に、修士プログラムと博士プログラムをどう差異化するか、研究者向け学位プログラムと実践家向け学位プログラムをどう差異化するか、という点に注目した。 ③のトロント現地調査においては、トロント大学オンタリオ研究所、オンタリオ州教員協会等教育関係団体における聞き取り調査を行った。特にトロント大学での調査においては、同大学の教育系大学院に相当するオンタリオ教育研究所の「リーダーシップ・高等・成人教育」研究科「教育リーダーシップと政策」専攻のM.Ed.及びEd.D.プログラムの運用実態について聞き取りを行い、前者に関してMRPオプションやコーホート形式の運用実態について、後者に関しては従来の学位論文と「実践学位論文」の相違やCPEDフレームワークのプログラム運用実態への影響などに関して、貴重な知見を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究においては現在までのところ、オンタリオ州のブロック大学のM.Ed.、トロント大学オンタリオ教育研究所(主にリーダーシップ・高等・成人教育研究科教育リーダーシップと政策専攻)のM.Ed.とEd.D.、ウェスタン大学のM.P.Ed.とEd.D.、アルバータ州のアルバータ大学(主に教育政策学専攻)のM.Ed.とEd.D.、カルガリー大学のM.Ed.(主に学際領域プログラムとスペシャリスト・プログラム)・Ed.D、ブリティッシュ・コロンビア州のブリティッシュ・コロンビア大学(主にバンクーバー・キャンパスの教育学専攻とオカナガン・キャンパスの「オカナガン教育スクール」)のM.Ed.・Ed.D.を検討対象とし、各プログラムの入学資格、修了要件、カリキュラムデザイン、受講形態、就学形態、その他各大学及び各プログラムの特色等を明らかにしてきた。 本研究は2018年度からの5か年プロジェクトであった(1年延長を2回承認されたため、2024年度までに延長)が、コロナ禍のため2020年度-2022年度の3年間は海外渡航ができず、ウェブサイトから入手できる情報やデータを中心にまとめ、論文を多数執筆した。とはいえ、現地調査でのデータ収集ができなかったことは、研究の進捗状況として「やや遅れている」と判断せざるを得ないことに大きく影響している。2023年度には海外渡航も解禁され、現地調査も再開できたため、今後は遅れの挽回を期したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は本研究の最終年度となるため、①最後のカナダ現地調査の実施と、②本研究のまとめを行う計画である。 ①最後のカナダ現地調査としては、これまでカナダ中央部から西部に至る主要大学を検討対象としてきたが、中央部より東に位置する大学については検討していない。そのため、今年度の調査地としては、ケベック州、ノバスコシア州、ニュー・ブランズウィック州、プリンスエドワード・アイランド州、ニューファンドランド&ラブラドール州のうちいずれか複数の州の主要大学を訪問し、現地調査を行う計画を立てている。質問項目等は、これまでの研究の成果から抽出する予定である。 ②本研究のまとめとしては、今年度の検討対象とする大学・プログラムに関する論文を個別に作成することに加えて、これまで検討対象としてきた個々のプログラムの特徴を改めて洗い出したうえで、これをカナダ全体として俯瞰した時に見出される特徴や長所、課題などを抽出し、本研究を結論付ける計画を立てている。また、本研究で得られた知見の視点から、日本の教職大学院の「教育修士(専門職)」学位プログラムの改善に加えて、今後日本でもEd.D.に相当する「教育博士(専門職)」とも称されるかもしれない学位プログラムを創設するとなった場合に、どのような事項について特に検討するべきかを析出することも、本研究の成果の活用方法として、念頭においている。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、本研究は2018年度から2022年度までの5か年プロジェクトの予定であったが、コロナ禍のため2020年度-2022年度の3年にわたって現地調査のためのカナダ渡航ができなかったことが挙げられる。本研究費の1年延長が承認されたため、2023年度はカナダ現地調査を実施し、そのための予算を執行した。しかし、カナダ現地調査のための費用が本研究費の大部分を占めるため、単純計算で2年分が次年度使用額として算出されている。 使用計画としては、本研究は再度1年の期間延長が承認されたため、2024年度にはカナダ現地調査を行い、そのための予算を執行する計画である。また、本研究申請時(2017年度)から既に7年が経過しようとしているため、当初準備していたコンピュータ等も老朽化しており、新たに買い直す必要があるため、そのために予算を執行する計画も立てている。
|