2020 Fiscal Year Research-status Report
19世紀アイルランドにおける公教育の宗派化に関する社会史的研究
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18K02288
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
岩下 誠 青山学院大学, 教育人間科学部, 准教授 (10598105)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アイルランド / 国民学校制度 / 宗派化 / 宗教教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画にもとづき、2020年度は在外研究制度を申請し、ダブリン・シティ・ユニヴァーシティに所属して上記の研究を遂行する予定であった。しかし、2020年3月以降の世界的なコロナパンデミックにより、渡航制限がなされ、受入研究者のブレンダン・ウォルシュ博士からも、該当年度における客員研究員としての受け入れは難しいという連絡をいただいた。したがって、予定していた在外研究を中止し、研究計画を国内で遂行可能なものに変更したうえで、特別研究期間制度に振り替えることにした。 具体的な成果については、まず2019年度教育史学会で行った口頭報告をもとに論文を執筆し、教育史学会に投稿した。審査の結果、同会会誌第64集(2021年9月刊行予定)への掲載が決定している。 また、ダブリン・シティ・ユニヴァーシティのブレンダン・ウォルシュ博士から彼が編者を務めるアイルランド教育史論文集(Brendan Walsh(ed.), Educational Policy in Ireland since 1922(Palgrave, forthcoming))への寄稿を依頼され、2020年12月に脱稿して提出した。Denominationalism, secularism, and multiculturalism in Irish policy and media discourse on public school educationという題で本の一章を構成することになる。こちらも2021年度中の刊行が予定されている。 また、これらの研究活動の成果を社会一般に還元したものとして、教育史の入門書を、有斐閣ストゥディアシリーズから刊行した(岩下誠・三時眞貴子・倉石一郎・姉川雄大『問いからはじめる教育史』(有斐閣、2020年))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この研究の目的は1831年にアイルランドで成立した公教育制度、通称「国民学校制度」の展開の過程を明らかにすることにある。この「宗派化」の具体的な様相を解明するためには、本来は刊行史料だけではなく、地方教育行政史料その他の詳細な調査を行う必要がある。したがって、もともとの研究計画では、2020年度に在外研究制度を申請し、ダブリン・シティ・ユニヴァーシティに所属して上記の研究を遂行する予定であった。 しかし、2020年3月以降の世界的なコロナパンデミックにより、受け入れ先のバーミンガム大学より、該当年度における客員研究員としての受け入れは難しいという連絡をいただいた。したがって予定していた在外研究を中止し、研究計画を国内で遂行可能なものに変更した。さらに、今後も渡航や史料調査が著しく制約される懸念があり、厳密には当初の予定より「やや遅れている」というよりも、今後の研究計画も、最悪の場合、国内で遂行可能なものに修正する必要を感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画は、アイルランドにおける史料調査を前提としたものから大幅に変更し、次の三つの目標を立てることにする。 第一に、前述した国民学校の宗派化に関する論文を推敲し、教育史学会会誌に投稿する。 第二に、国民教育委員会年次報告書より、国民学校制度から「除籍(struck off)」された学校のデータベースを構築する。これを構築することによって、いつ、どの地域で国民学校制度から除籍された学校がどの程度あったのかという量的側面を跡付けると同時に、部分的にではあるが、どのような事情で各時代・各地域の学校が制度から除籍されたのかを再構成する。 第三に、国民学校制度の認可や除籍にかかわる視学官制度の変遷を検討する。とりわけ、1850年代以降、視学官James W. Kavanaghをめぐるスキャンダルを事例として取り上げ、その再構成を通じて国民学校制度の宗派化の側面を検討することを試みる。
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Causes of Carryover |
2020年度は、コロナ禍により当初予定していた在外研究が遂行できなくなり、特別研究期間に振り替えて在宅での研究に従事した。結果として予定していたアイルランドでの史料調査も遂行できなくなった。そのため、史料調査および研究交流のために多額を計上していた旅費が使用できなくなり、次年度使用額が発生している。次年度以降も渡航は厳しい状況と考えられるが、一部はコロナ禍が収束した以降の旅費として使用を予定し、状況が整わなければ、史料・資料購入や英文校正のための経費に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)