2021 Fiscal Year Research-status Report
19世紀アイルランドにおける公教育の宗派化に関する社会史的研究
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18K02288
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
岩下 誠 青山学院大学, 教育人間科学部, 准教授 (10598105)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アイルランド / 宗派化 / 国民学校制度 / 宗教教育 / 公教育 / 教育史 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナウィルスの感染状況の拡大により、2020年度以降の研究計画は、中途での変更を余儀なくされた。変更後の2021年度の計画としては、(1)国民学校の宗派化に関する論文を推敲し、教育史学会会誌に投稿する。(2)国民教育委員会年次報告書より、国民学校制度から「除籍(struck off)」された学校のデータベースを構築する。(3)国民学校制度の認可や除籍にかかわる視学官制度の変遷、とりわけ視学官ジェイムズ W. カバナー(James W. Kavanagh)のケーススタディを準備する、という三つの目標を立てた。 (1)に関しては、『日本の教育史学』第64巻(2021年10月)に「19世紀中葉アイルランドにおける国民学校制度の宗派化―私設公営学校(non-vested school)の導入と展開―」として掲載された。(2)に関しては、アイルランド国民教育委員会年次報告書を史料とし、1837年から1900年までの「除籍・認可取り消し」のデータベースの作成(5298件)を終えている。今後、量的な分析を試みる。(3)に関しては、現地の文書館での史料調査が不可能であったため、イギリス議会文書データベース等のデジタルアーカイヴズを中心に、カバナー視学官に関する基礎的な史料蒐集を行った。 また、ダブリン・シティ・ユニヴァーシティのブレンダン・ウォルシュ博士から依頼された論文集Education Policy in Ireland Since 1922(Palgrave Macmillan, 2022)への寄稿を完了した。Chapter 4. Denominationalism, secularism, and multiculturalism in Irish policy and media discourse on public school educationとして掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
精確には遅れているというよりも、当初予定していた計画についてかなりの変更を余儀なくされている部分がある。また、変更後の計画においても、状況が好転していない関係でかなりの制約がなされている部分がある。例えば、当初予定していたリムリック州のケーススタディは断念せざるを得なくなった。また、変更後の研究計画においても、例えば「除籍・認可取り消し」学校に関して、その量的動向を把握することはデータベースの作成などで可能になるとしても、個々のケースの分析は文書館に所蔵されている個々の学校の史料に当たらなければならないはずだが、現在、渡航して現地で史料調査を行うことがやや難しい状況にある。こうした状況を踏まえるならば、現状は、「やや遅れている」と判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の大幅な変更を余儀なくされたとはいえ、2022年度は本研究の最終年度となる。基本的には、コロナウィルスの感染状況の好転を想定して渡航および史料調査(とりわけアイルランド国立公文書館の国民教育委員会関係史料)の可能性を探りつつ、国内で可能な研究を並行して進めていく。具体的には、(1)作成し終えた国民学校の「除籍・認可取り消し」に関するデータベースの分析を行う。時代・地域・除籍理由など、複数の観点からラフな見取り図を得ることができるはずである。(2)これまでの研究で得られたアイルランド国民学校の宗派化に関する知見を総合しつつ、他の地域における公教育制度の「世俗化」と比較する。例えば、近年では、19世紀後半から20世紀初頭までのヨーロッパや南アメリカの各地域において、公教育制度の「世俗化」がどの程度進展したのか、それを規定する要因は何なのかを解明しようとする研究が発表・展開されてきている(Ansell, B., & Lindvall, J. (2013), ‘The Political Origins of Primary Education Systems: Ideology, Institutions, and Interdenominational Conflict in an Age of Nation-Building’, American Political Science Review, 107(3)。また国際教育史学会の研究部会として設置された'History of Laic Education: Concepts, Policies and Practices around the World’は、今後研究成果を公開していくはずであり、活動をフォローする予定)。これらの成果に学び、本研究の成果をより広い歴史的文脈に位置づけるレビュー論文の執筆を目指す。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの感染拡大により、研究計画において当初予定し、大幅な予算を割いていた海外渡航旅費(史料調査および国際学会への参加)が実施できなくなった。結果として、計上していた旅費が使用できず、多額の次年度使用額が生じている。 次年度使用額については、感染状況が好転した場合、実施できなかった史料調査のための渡航費用として使用するほか、渡航ができない場合、アイルランドの図書館や文書館による資料・史料の複写費および郵送費に充てることを予定している。
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