2018 Fiscal Year Research-status Report
青少年向けメンタリング・プログラムの基礎理論と政策的妥当性の検証
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18K02294
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
渡邊 かよ子 愛知淑徳大学, 文学部, 教授 (90220871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 直登 愛知淑徳大学, グローバル・コミュニケーション学部, 教授 (90175109)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 貧困対策 / メンタリング / 青少年 / プログラム評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
青少年向けメンタリングプログラムの基礎理論と政策的妥当性の検証に向けた本研究の三つの方向からのアプローチに関する2018年度の実績は以下のとおりである。 第一の日本における先駆的プログラムである広島の「青少年支援メンター制度」の成果と有効性に関する中長期的プログラム評価については、例年通り、2018年12月の定期研修会での講演と事例検討会での助言を行い、同プログラムに関する観察と情報収集を行った。加えて、これまで同プログラムの13年間の活動で3回実施したプログラム評価の多変量データを時系列的に比較分析し、2019年8月のWorld Education Research Association東京大会での発表申込を行い、受諾された。 第二の円環的生涯発達支援としてのメンタリングプログラムの理論的精緻化については、従来の保守性を基盤とするメンタリングへの批判的検討として、批判的メンタリング、メンタリングのネガティブな要素の分析に関する文献収集とレビューを開始し、2019年度の学会発表にむけた準備を行った。 第三の各国のメンタリング運動と政策の動向分析については、2014~2018年にMENTOR(National Mentoring Partnership)が発表した米国のメンタリング運動に関する三つの報告書を分析し、最新の米国のメンタリング運動の全容把握を行った。また貧困対策としてのメンタリング運動の成果について、米国とカナダにおけるメンタリング・プログラムの費用対効果に関する研究のレヴューを行い、メンタリング・プログラムが貧困対策として有効に機能する可能性に関する研究報告を行い、その概要に関する論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体としてはまずまずの進捗状況といえるが、2018年度前半は私的事情(孫の誕生に伴う看護家事応援)によって十分な研究の時間をとることができず、結果的に三つのアプロ―チ間で進捗度に差が出ることになった。 第一の広島の青少年支援メンター制度のプログラム評価については、定量的分析を終え、次年度の国際学会での発表にむけて順調に進んでいるといえる。 第二の円環的生涯発達支援としてのメンタリングプログラムの理論的精緻化については、比較的まとまった日数の集中した時間が必要な課題であるため、残念ながら実質的に殆ど進展していない。従来のメンタリングへの批判的検討として、批判的メンタリング、メンタリングのネガティブな要素の分析に関する文献収集とレビューの開始に留まっている。 第三の各国のメンタリング運動と政策の動向分析については、2018年度後半以降、順調に研究が進んでいる。まず、世界のメンタリング運動を牽引してきた米国のメンタリング運動の中核をなすMENTOR(National Mentoring Partnership)が2014~2018年に発表した青少年、メンター、プログラム(事務局)に関する三つの報告書を分析した。米国における青少年向けメンタリング・プログラムをめぐる需要と供給の全貌が明らかとなり、メンタリング運動の趣旨と社会政策的意義が受け入れられていることが明らかとなった。また昨今日本においても顕著となっている子どもの貧困対策とメンタリングの関連について、北米におけるメンタリング・プログラムの費用対効果に関する研究のレヴューを行い、メンタリング・プログラムの対貧困施策としての特徴、ならびにメンタリング・プログラムが他の貧困対策と比較しても有効に機能している可能性に関する研究報告と論文発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
第一の広島の青少年支援メンター制度のプログラム評価については、定量的分析の深化に加え、定性的分析に着手する。メンティ、メンター、保護者の報告書分析を行い、三者とプログラム事務局担当者へのインタビューも実施し、15年間のプログラムの活動実践とその変容について分析したい。 第二の円環的生涯発達支援としてのメンタリングプログラムの理論的精緻化については、意識的に目先の形式的な成果発表よりも研究の本質的熟成に十分な時間をかけ、従来のメンタリング理論に対する批判的メンタリングの意義、企業組織におけるメンタリング研究で検討されてきたメンタリングのネガティブ効果が青少年向けプログラムにも妥当するのか、またそうしたネガティブな効果がいかにして克服されうるのかじっくり検討したい。またピア・メンタリングの基礎理論の一つとされているコフートの理論についても、通常の一対一のプログラムでも有効に機能するのか、人間発達の生態系における円環的生涯発達支援の視点から検討したい。 第三の各国のメンタリング運動と政策の動向分析については、引き続き、貧困対策としてのメンタリング・プログラムの効果を中心に検討していきたい。2018年度の研究レヴューで明らかになった米国やカナダの青少年向けプログラムに訪問し、事務局担当者やメンター、メンティに調査を行う可能性を探りたい。また北米以外の地域、特にヨーロッパやオセアニアの動向の分析に加え、アジアやアフリカ等の地域における青少年向けメンタリング・プログラムの動向についても情報収集を行い、メンタリング運動とそれを促進するメンタリング政策の普遍性の有無について検討したい。日本でも喫緊の課題となっている移民や難民向けのメンタリング・プログラムの動向と成果、日本での展開に向けた知見についても十分な情報収集をしていきたい。
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Causes of Carryover |
2018年度前半にライフサイクル上の問題(孫の誕生に伴う看護家事応援)により、十分な研究時間を確保することができず、研究が当初の計画よりも遅れてしまった。2018年度の予算の未使用額(471,712円)は、2019年度の予算に組み入れ、データ分析に要する物品費(PC関連機器等)と人件費・謝金(資料整理とデータ入力)、消耗品として使用する。
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Research Products
(4 results)