2019 Fiscal Year Research-status Report
青少年向けメンタリング・プログラムの基礎理論と政策的妥当性の検証
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18K02294
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
渡邊 かよ子 愛知淑徳大学, 文学部, 教授 (90220871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 直登 愛知淑徳大学, グローバル・コミュニケーション学部, 教授 (90175109)
今井 裕紀 新潟国際情報大学, 経営情報学部, 講師 (20866529)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メンター / メンタリング / プログラム評価 / 青少年 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は以下の3方面の研究成果を発表した。 ①青少年向けメンタリング・プログラムの研究の概括とレヴュー:渡辺かよ子「青少年向けメンタリング・プログラムの成果と評価」2019年9月『地域ケアリング』21‐10、62-65頁。 ②メンタリングの基礎理論の検討:渡辺かよ子「Critical Mentoringに関する考察」(早稲田大学/9月14日)『日本社会教育学会第66回研究大会プログラム要旨集』45頁。 渡辺かよ子「メンタリングが及ぼすネガティブな効果に関する考察」(国立教育政策研究所社会教育実践研究センター/12月1日)『日本生涯教育学会第40回大会発表要旨集録』36頁。渡辺かよ子「批判的メンタリングに関する序論的考察」『愛知淑徳大学論集―教育学研究科篇―』10、67-77頁。渡辺かよ子「青少年向けメンタリング運動の生成とIHADプログラム」『愛知淑徳大学論集―文学部篇―』45、93-105頁。 ③青少年向けメンタリング・プログラムのプログラム評価と政策的妥当性の検証:Watanabe, N. & Watanabe, K., Longitudinal Evaluation of Eclectic Youth Mentoring Program Implemented in Hiroshima, Japan, WERA (World Education Research Association) Focal Meeting in Tokyo, 10th Anniversary, August 6, 2019, Gakushuin University, Conference Program, p.41。渡辺かよ子・渡辺直登・今井裕紀「青少年メンター制度:15年の成果の概要」(広島市こども未来局こども・家庭支援課『メンターだより』181号別添資料3月31日、1-4頁。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度全体として研究は概ね順調に進展している。 ①青少年向けメンタリング・プログラムの研究レヴューにおいては、日本における本研究の国際的位置づけを明確化し、メンタリング・プログラムの成果の普遍性の検証に向けた今後の課題を考察した。 ②基礎理論の検討については、メンタリング・プログラムが必ずしもよい成果ばかりでなく、時によからぬネガティブな影響を与える可能性とその防止に向けた配慮の必要性について先行研究のレヴューを行った。また、メンタリング・プログラムの基礎理論がどのような文脈から生み出されてきたのか、米国のメンタリング運動興隆の導火線となったIHAD (I Have A Dream)プログラムが生成する歴史的経緯を分析し、理論と実践の連関を検討した。さらに青少年向けメンタリング・プログラムの暗黙の前提となってきた社会的適応の問題に挑む批判的メンタリングの理論について、批判的人種理論との連関からその妥当性を検討した。 ③青少年向けメンタリング・プログラムの政策的妥当性の検証については、広島市青少年支援メンター制度が実施した2007年・2012年・2016年の時系列データを分析した。当事者(メンティとメンター)の満足感や成果としてのメンティの態度変化等の認識が高まり、ないしは高止まりすることが明らかとなる一方、保護者のプログラムへの満足度はプログラムへの期待の高まりからかやや低減する傾向が見られた。総じてメンタリング・プログラムは諸外国同様、日本においても当事者に深い満足と喜びを与えており、妥当な青少年施策として機能しうることが検証された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、①青少年向けメンタリング・プログラムに関する研究のレビュー、②青少年向けメンタリング・プログラムの基礎理論の構築と深化、③青少年向けメンタリングのプログラム評価を継続実施していく予定であるが、問題は昨今の新型コロナウィルスの世界的蔓延による学会や研究会のキャンセルである。既に申し込んだ国際学会での発表も学会そのものがキャンセルとなり、成果の発表は遅滞を余儀なくされている。研究発表のスケジュールを組み替えながら、現下の状況を活かし、可能なことを進めていきたい。 ①については、引き続き内外のメンタリング運動の成果をインターネットを駆使して情報を集め、整理し、最前線の状況をまとめていきたい。特にこの新型コロナウィルスの蔓延によってメンタリング運動がどのような変化を強いられているのか、特にテレメンタリングの現状と今後の可能性について、参加当事者ならびに政策機能の複眼的視点から検討していきたい。 ②については、特にメンタリングのネガティブ効果とその未然防止に関する知見をまとめ、理論と実践の往還を試みたい。また日本文化ないしは日本での人間形成における私淑や役割モデルの観点からメンタリングの理論を情報化と国際化の視点から検討したい。 ③については、引き続き、広島市青少年支援メンター制度の時系列データを分析し、特に組合せによる継続効果を検討する。よき成果を上げる組合せの特性を明らかにし、それらの特性を増進することでプログラムの成果は高まり、また逆に成果の少ない組合せの特性を明らかにすることでメンタリングのネガティブな効果を未然防止することも可能となると考えられる。
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Causes of Carryover |
令和元年度には夏に発表を行った国際学会が東京で開催され、また2月に参加予定をしていた研究会が新型コロナウィルスの蔓延によってキャンセルされたために、未使用金が発生した。令和2年度には、令和元年度の未使用金と令和2年度の研究費をあわせて使用することとしたい。
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