2019 Fiscal Year Research-status Report
教育成果の質的測定を活用した教員・学校・教委連携型教育改善システムの開発的研究
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18K02304
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
服部 憲児 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (10274135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮村 裕子 畿央大学, 教育学部, 准教授 (80441450)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 教育改善 / 学校と行政の連携 / 質的測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国家の財政状況が厳しさを増し、政策評価の実施に象徴される効率的な行政が求められている中、成果を数字で表すことが難しい教育の領域において、教員・学校・教育委員会の連携による教育改善を可能にする効率的な評価システムを開発すること、その方途と必要な条件、課題の明確化を試みるものである。具体的には、①教育成果の質的測定手法のさらなる開発・改良、②成果測定のプロセスを教員の資質向上や学校全体の教育改善につなげる仕組みの構築、③それらが教育委員会による自己点検・評価と連動するシステムの開発、これらの実現に向けて必要な諸条件や課題の明確化を行うもものである。 令和元年度は、①および②については、前年度に行った「質的測定シート」の改良と、それを活用して実施したワークショップ型教員研修の試行およびその分析を踏まえ、この教員研修(年間を通しての「質的測定シート」の記入、1年間の子どもたちの変化の把握、学校内の諸施策や教員の実践の振り返り、グループワークによるこれらの関係性についての検討)を正式に実施した。加えて、①に関して社学連携事業を題材に、参与観察によりその教育成果の質的測定の指標の作成を継続して行った。③については、研究に協力いただいている教育委員会に対して、引き続き行政事務の自己点検・評価に関する現状と課題についてヒアリングを実施するとともに、次年度以降の研究計画について打ち合わせを行った。 また、本研究の成果の一部を学会において報告するとともに、研究ノート(1件・査読付)として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、令和元年度は、①前年度の研究成果を踏まえつつ「質的測定シート」の改良を図ること、②これを活用しつつ教員個人および学校レベルで省察を行って能動的に改善に取り組む方策の構築に向けての検討を行うこと、③教育委員会が教育現場の成果と課題を把握し、それを政策に反映させる仕組み作りの準備を行うことの以上3点を実施する予定であった。研究実績の概要欄で述べたとおり、①および②については、調査対象校の協力により、予定通り「質的シート」の改良を図ることができ、それを活用したワークショップ型の教員研修を実施することができた。今後さらに実践と改良を重ね、教員の主体的・能動的な取り組みになるようにしていくことが課題である。③については、教育委員会への聞きとり調査や教育行政事務の自己点検・評価の仕組みづくりへの協力を行い、学校との連携に向けての課題や仕組み作りの作業の難しさが明らかになった。 上述のように、①および②については順調に研究が進んでいるが、③については仕組み作りに向けての課題の把握など一定程度の進展はあったが、それを踏まえてのシステム構築の方向性を見いだすまでには至らず、次年度以降に検討すべき事項が残された。ただし、この点については、次年度における調査と作業協力について教育委員会の了解を得ることができている。以上から、総合的には「おおむね順調に進んでいる」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、当初の研究計画に沿って残りの1年間に、①「質的測定シート」および質的測定法のさらなる改善、②成果測定のプロセスを教員の資質向上や学校全体の教育改善につなげる仕組みの構築、③教育委員会による自己点検・評価と成果測定を連動させるシステムの開発を試みる。 予定としては、①については、必要に応じて「質的測定シート」を修正するとともに、収集したデータの更なる分析を行う。②については、研究協力校に教育成果の質的測定およびそのデータをもとにした研修を引き続き実施する。③については、研究対象の教育委員会との共同での自己点検・評価の指標およびエビデンスに関するワークショップの実施を交渉中である。 しかしながら、新型コロナウイルスの感染防止の観点から、学校の休校措置が長期化することも予想され、令和2年度においては、申請時の予定通りに研究が遂行できない可能性が生じている。そのため当面は、令和元年度までに取得したデータ(「質的測定シート」の記入内容、ワークショップ型研修の実施記録、アンケート調査)のより詳細な分析を行うとともに、オンラインによる教育委員会への聞き取り調査の可能性を検討していく。また、より多くのデータ取得のため「質的測定シート」のWeb版作成を検討し、より多くの教員が省察できる体制づくりを試みる。事態の推移を見ながら、適宜学校および教育委員会への現地調査を再開するとともに、研究成果を学会報告や論文等の形で発信していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた状況としては、調査を実施していた社学連携事業が途中で中止になったこと、および、対象校の都合でアンケート調査の実施が年度末ぎりぎりになったことにより、データ入力の費用(謝金等)が予定通り執行できなかったこと、先方の都合により教育委員会調査が予定よりも少なくなったこと、予定していた学会出席が取りやめになったこと等によるものである。 今後の使用計画としては、当初予定していた支出(図書購入、研究成果報告のための旅費、報告書の作成費等)に加えて、主として、(1)研究分担者のパソコンが老朽化しているため、今日の状況下におけるオンライン会議での使用に対応できるパソコンの購入費、(2)令和元年度に執行が間に合わなかった研究データの入力のための費用として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)