2018 Fiscal Year Research-status Report
次期学習指導要領における小学生の情報活用能力向上を図るコアカリキュラムの開発
Project/Area Number |
18K02308
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
前田 康裕 熊本大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (30803308)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 情報活用能力 / 資質・能力 / タブレット型端末 / プログラミング教育 / ICTの活用 / タキソノミーテーブル / コアカリキュラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、次期学習指導要領において学習の基盤となる資質・能力と位置づけられた情報活用能力(情報モラルを含む。)を育成するためのコアカリキュラムを開発することである。公立小学校において広く活用できるように、「次期学習指導要領に適応した小学生の情報活用能力の指標の具体化」「効果的なプログラミング教育の授業研究とモデル化」「小学校における情報教育コアカリキュラムの開発」の三本柱で取り組んでいる。 平成30年度は、先進校の視察を熊本市教育委員会や附属小学校の担当者と行い、その知見を参考にしながらカリキュラムの開発を行っていった。基本的には、国語科の単元を中核として、ブルームのタキソノミーテーブルを用いた学習過程の改善を目指す内容となっている。これは、従来の学習が、情報機器を使用することが目的となりがちだったことに対して、情報機器を使用することによって学習者の情報活用能力を育成することを単元レベルで明確に位置づけたものである。このことによって、学習者は「事実的知識」「概念的知識」の段階から「手続き的知識」および「メタ認知的知識」の段階まで深く学習できることを目指した。 令和元年度から、熊本市の小中学校でタブレット型端末が導入されることになり、熊本市教育委員会と連携し「熊本市版ICT教育モデルカリキュラム」という名称で開発を進めている。現在は、すでに研究指定校やモデル校等で実証するための原案が完成しており、今後は実証段階に入る。「国語科における情報活用能力の育成」「タブレット型端末を用いた協働的な学習」「プログラミング的思考を育成する学習」「小学校・中学校が連携した情報モラル教育の推進」の4つの研究テーマで学校と連携した研究を行っていく予定である。 令和2年度から新しい学習指導要領に準拠した教科書になるために、その単元に合わせたカリキュラムに改定していくことが大きな課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、熊本市教育委員会の指導主事及び附属小学校の担当者と連携し、先進校の視察を行っていった。主としてタブレット型端末を活用した授業実践の取組については、京都教育大学桃山小学校のメディア・コミュニケーション科の先行研究が熊本市の学習環境に近いこともあり、協働学習の知見を得ることができた。また、プログラミング教育に関しては、小金井市立前原小学校においては学年ごとのカリキュラムが開発されていることもあり、具体的な学習者の姿を観察することができた。 こうした視察を元にして、様々な教科に一度に広げるのではなく、ベースとなる教科を絞り、その学習過程を明確にしたカリキュラムを開発する必要性があるという結論に至った。そこで、国語科の授業を中核として、学習者が情報の収集・編集・発信・評価の一連の学習過程を経験し、それを他教科に広げられるようなカリキュラムを考案していった。そのための理論的な知見をブルームの改訂版タキソノミーに求めた。これは、「事実的知識」「概念的知識」の段階から「手続き的知識」および「メタ認知的知識」の段階までの学習を設計するものであり、従来は「調べて発表」レベルで終わりがちになっていた学習から「情報の比較・分析」「表現の吟味」「方法論の獲得」「振り返りによる学びの言語化」といった学習への進化を狙うものである。そのことにより、情報機器を使用することが目的となりがちだった従来の学習に対して、情報機器を使用することによって学習者の情報活用能力を育成することを単元レベルで明確に位置づける内容となっていった。そして、単なる年間指導計画ではなく、学習の考え方や校内研修までを含めたコアカリキュラムの原案が完成した。 このコアカリキュラムは、熊本市内の小学校の学習環境に合わせており、「熊本市版ICT教育モデルカリキュラム」という名称で、これから実証段階に入ることになる。
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Strategy for Future Research Activity |
熊本市は平成30年度10月に、熊本大学、熊本県立大学、NTTドコモと「熊本市 教育情報化の推進に関する連携協定」を提携したこともあり、この四者が協働してICT教育を推進していくことになった。そのために、月に一回の定例会議を開催し、開発したカリキュラムに関しても様々な立場の意見を求めながら推進する体制が整っている。 令和元年度からは、熊本市教育センターが研究校・モデル校として位置づけている4つの学校において、カリキュラムの実証作業を行っていく。具体的には、「国語科における情報活用能力の育成」「タブレット型端末を用いた協働的な学習」「プログラミング的思考を育成する学習」「小学校・中学校が連携した情報モラル教育の推進」の4つの研究テーマで学校と連携しながら、より具体的なカリキュラムにしていく予定である。 進捗状況に関しては、日本教育メディア学会等でカリキュラムの内容や実証の具体を報告しながら、全国の状況を把握しながら研究を行っていくようにしている。 現在、特に課題となっているのはプログラミング教育である。それは、カリキュラムだけの問題ではなく、機材とソフトウェアも必要であり、また、それを実現するための教員のスキルアップも必須の条件となるからである。実際に、全ての学校で無理のない形で推進するためのカリキュラムを開発していきたいと考えている。 また、令和2年度からは、次期学習指導要領に準拠した教科書に改訂されるために、それに応じたカリキュラムの修正も行わなくてはならない。新教育課程に対応したものにして、年度末には熊本市内の全ての小学校に公開していく予定である。
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Causes of Carryover |
プログラミング教育の関するカリキュラムを開発するためにはロボット等のハードウェアが必要となり、そのための予算を確保する必要がある。 したがって、そのためのハード等の購入を行う予定である。
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Research Products
(1 results)