2019 Fiscal Year Research-status Report
The Newly-Established Subject Science and the Policy of Vocational Education in Meiji Era
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18K02311
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
伊藤 稔明 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (40295572)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 小学校理科誕生 / 小学校令 / 教育令 / 実業教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究概要は以下のとおりである。 我国の小学校において、理科という学科(現在の教科)が正式に誕生したのは、1886(明治19)年5月に文部省令第8号として公布された「小学校ノ学科及其程度」によるものである。しかし実際には、その半年前の1885(明治18)年12月に、文部省より各府県の学事担当者に内示された「小学科課程表」というカリキュラム表によって、理科は設定されていた。つまり、理科は小学校令期ではなく、再改正教育令期に誕生していたことになる。この「小学科課程表」に基づいて、神奈川県、埼玉県、群馬県においては、「小学校ノ学科及其程度」を待たずして、理科を含む教則が作成されている。 理科の誕生とは、2つの要素から成り立っていると考えられる。ひとつは、それまでの物理や博物といった自然科学の学科を理科という一学科に統合したこと、もうひとつは、教育令では“諸科学の大意を学ぶ”ことになっていた教育内容を自然現象や自然物の羅列を学ぶことにしたということである。 理科誕生のひとつめの要素である統合は、小学校縮減という文脈のなかで授業数を減らそうとした結果であろうし、ふたつめの教育内容の変更は、諸科学の大意より産業に役立つものが求められたということであろう。小学校条例取調委員がこの当時に教育雑誌などに残した言説には、理学教育(このころ、自然科学は理学と呼ばれていた)を実業教育的に改革することを強調するものが多い。9名の小学校条例取調委員のうち、久保田と野村を除く7名がそうした主張を展開している。このことは、当時の文部省では“理学教育を実業教育的に”という考えが主流であったことを物語っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究では、1880年代後半の小学校における科学教育と実業教育の関連を探ってきた。申請の際に述べたように、各地の実情を明らかにするために全国悉皆調査を目指して調査をすすめてきた。これまでに、徳島、鳥取、広島、山口、静岡、千葉、新潟、岐阜、長崎、大分、茨城、富山、東京、埼玉、島根、福島、山形、福井などで調査を進めてきた。 さらに、2019年度は、5月に岐阜大学で開催された日本科学史学会のシンポジウムで発表した。その内容は「シンポジウム 150年を迎えた科学・理科・実業教育の史的新実相を求めて : 「理科」誕生期前後の新知見とその現代的再構成」に収められている。これまでの科研費での研究で蓄積した小学校理科誕生についての知見を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
論文として結実させ得ていないものの、科研費での調査で貴重な事実の発掘はそれなりに進めてきてはいる。2020年度は学内業務との調整を今より一層図って、これまでの遅れを取り戻せるよう計画的に研究をすすめていきたい。
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Causes of Carryover |
学内業務繁多のためにこのようなことになってしまったが、次年度以降はより計画的に科研費での研究をすすめていきたい。
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[Journal Article] シンポジウム 150年を迎えた科学・理科・実業教育の史的新実相を求めて : 「理科」誕生期前後の新知見とその現代的再構成2020
Author(s)
小林 昭三 , 伊藤 稔明 , 高橋 浩 , 赤羽 明 , 所澤 潤 , 玉置 豊美 , 興治 文子 , 生源寺 孝浩 , 大石 和江 , 興治 文子 , 北林 雅洋
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Journal Title
科学史研究
Volume: 292
Pages: 383-392
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