2021 Fiscal Year Research-status Report
The Newly-Established Subject Science and the Policy of Vocational Education in Meiji Era
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18K02311
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
伊藤 稔明 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (40295572)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小学校理科誕生 / 実業教育 / 小学校令 / 小学科課程表 / 小学校ノ学科及其程度 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴う様々な措置のために、ごく限られた範囲の調査しかできなかった。そのなかでも、明治20年に島根県那賀郡に設置された浜田高等小学校に関する調査には、何度か行くことができた。浜田高等小学校には全国的にも珍しい中学予備科が設置されており、ここでの科学教育を明らかにしようと調査を進めた。2010年に執筆した拙稿「明治18年「福岡県小学女児教則」についての一考察」では、福岡県では女児小学の教則に、明治18(1886)年1月段階で理科という教科(当時の言葉で学科)が設定されていたことから、理科新設のひとつの側面として低レベル化というものを指摘した。ちなみに全国的に理科が正式な教科として新設されるのは明治19年のことである。もし、上記の拙稿で指摘したことが正しいならば、当時もっとも高度な小学校として計画された中学予備科での科学教育は、「理科」ではなく、従前のように「物理」や「化学」といった学問ごとの設定がされていることが予想される。したがって、浜田高等小学校の中学予備科における教則を発掘することが当面の目標となるのだけれども、そもそも浜田高等小学校に関する資料は乏しく、『島根県近代教育史』に掲載されている既知の史料以外のものは発見が困難であると想像される。2021年度の研究は、この辺りを焦点にしてすすめていった。具体的には、浜田市にとどまらず(旧那賀郡のエリアはほぼ現在の浜田市)、旧石見の国全域に調査対象を広げて調査を行った。それは、島根県会の議事録に、浜田高等小学校の中学予備科には、那賀郡のみならず石見の国一円から生徒が集まったと記録があるからで、それは那賀郡から石見の国の町村に対して生徒募集が掛けられたとするのが自然だからである。今年度は主にその痕跡を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一番大きな原因は、新型コロナウイルス感染症の蔓延による県外移動自粛のために、何度も調査出張の断念を余儀なくされたことである。本研究には調査は不可欠であり、この実施が困難になることで、研究の進展が滞ってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症への対策の緩和が進められようとしているため、機会を逃すことなく必要な調査を行って研究を軌道に乗せたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の蔓延のために必要な調査出張に出ることができなかったことが最大の要因。この科研費は本来昨年度までのものを1年間延長したものなので、今年度の助成金はない。今年度は昨年度より出張が可能なようであるので、計画的に使用したい。
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