2019 Fiscal Year Research-status Report
教育および教育行政の「独立」「中立」性に関する系譜的研究
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18K02312
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
荻原 克男 北海学園大学, 経済学部, 教授 (70242469)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 教育行政の一般行政からの独立教育の中立性 / 教育の中立性 / 教育行政の中立性 / 教育二法 / 地方教育行政法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は1950年代の法制度再編に焦点づけて,教育及び教育行政の「独立」「中立」概念の変容過程について検討を行った。具体的には,①1954年の教育二法の制定へとつながる「偏向教育」論・「教育の政治的中立」性をめぐる論争,②1956年の地方教育行政の組織及び運営に関する法律(1956年)による教育委員会制度改編,の2つを取りあげた。 50年代を一つの転換期と位置づけての分析である点は前年度と共通するが,昨年は学説・言説面が中心だったのに対して(eg.勝田・堀尾論文),本年度は制度・政策面に重点をおいた。前者の教育二法はまさに勝田・堀尾論文が書かれた現実的・歴史背景をなすものであった。この再検討に際し,教育二法に関する先行研究者であり,本課題の連携研究者でもある藤田祐介氏と研究交流を行った。後者の地方教育行政法では,教育委員会の制度原理の一つであった一般行政からの「独立」という理念が消失し,一般行政との「調和」や「中立」という制度概念へと転換された。これら二つの制度・政策変容に通底する「教育の中立性」概念とは何かについて検討作業を行った。この作業を通じて,「中立」概念の2つの次元,すなわち①学校教員や生徒の活動に関わる次元と,②教育委員会と学校の関係や中央地方の行政関係の次元,との違いと重なりをどのように整理するかが重要な理論的課題であることが見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の遅れを取り戻しつつ,本年度の作業を進めるのは高いハードルであったが,取り上げる予定だった対象については一通りカバーできた。ただし,いまだ概括的・表面的な把握にとどまっている面もあり,論文として公表できる水準にまで分析を深めることができなかった(今後の課題として残された)。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き,大学の管理業務を担いながらの研究活動という状況に変わりはなかったが,今年度に入ってから業務効率は大きく前進した。昨年度,最大の反省課題とした研究時間の確保については,短い空き時間の有効活用等の工夫により若干ではあれ改善されたと思われる。新年度は新型コロナウィルス対応という予期せぬ管理業務が出来したため先の見通しが立てがたいところがあるが,当面は出張や対面ではない形(ネットを通じたデータベース検索,文献複写依頼,またWeb会議による研究協議等)での作業を中心に進める。昨年度までで50年代は一応の区切りがついたものとし,次の分析対象をその前後の時期(40年代の戦後改革と60年代)に拡大する。
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Causes of Carryover |
昨年度からの作業遅れが尾を引いた関係で,繰越し経費が発生した。今後の計画としては,主に資料収集に関わる執行を予定している。本課題の関連史資料の調査・収集については,東京所在の施設・機関(国立公文書館,国立教育政策研究所他)や大学への出張が必要となるため,可能なかぎり調査出張を行う(旅費)。ただし,新型コロナウィルス感染拡大の状況次第では,こうした出張が何回実施できるのか見通しが不確定なところがある。そのため,次善の方策として,古書購入や雑誌記事論文の複写依頼などの形での資料収集を平行して進める(図書費,文献複写費,郵送費)。関連研究者からの専門的知見の供与や意見交換のための出張(旅費)を可能なかぎり実施するが,これについても次善の策としてWeb会議等による打合せを平行して実施する(その通信環境整備のための周辺機器の購入)。
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