2020 Fiscal Year Research-status Report
地域ガバナンス向上の為の実践コミュニティ間越境と協同関係構築に関する実証的研究
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18K02313
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Research Institution | Sendai Shirayuri Women's College |
Principal Investigator |
槇石 多希子 仙台白百合女子大学, 人間学部, 名誉教授 (80209402)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣森 直子 青森県立保健大学, 健康科学部, 講師 (40315536)
松本 大 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (50550175)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 実践コミュニティ / 越境 / 対人支援職・者 / ジェンダー / 社会教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域づくりや地域の統合的な活性化を目指して社会教育関連施設・部局の職員、ソーシャルワーカ、保健師などの対人支援職・者が専門職としての力量や自己認識(アイデンティティ)が、日々の職場の実践的なコミュニティ(活動の場である職場)の中でいかに形成されていくのかをあきらかにしながら、実践的なコミュニティ間の越境を通して、どのようなまたいかにしてそれぞれの専門性を高めることが可能になるのかを明らかにしようとする実証的な研究である。 そのためには、①専門職・者が持つべきであるとされる明示的な規範、暗黙の規範、規則、習慣などを既存の手引き・資料を手掛かりとし、インタビュー調査などを通して明らかにする。また、②役割期待や役割遂行など具体的な相互の「交渉」がどのように展開されているのか、③これらの「交渉」において、ジェンダーや個人が持つ経験がどのような役割を果たすのか、ということを明らかにする。以上の諸点を明らかにしながら、専門職のアイデンティティの形成における実践コミュニティ越境がいかに意義を持つのかを実証することである。本研究は『状況的学習論』であり制度やパワーのあり方に注目することによって、専門職のアイデンティの形成過程における「制限」やジレンマに注視し進めている。 2020年度は研究代表者は、これまでのジェンダー研究をふまえて、神奈川県鎌倉市において、民生委員へのインタビュー調査を始めている。共同研究者及び研究協力者とは、コロナ禍の拡大による「緊急事態宣言」や「まん延防止措置」のために1度も会えずに終わった。メールやzoomでの会議や意見の交換についても、今年度は2回のみであった。しかしながら、コロナ禍のもとで、対人支援職・者の実践コミュニティの越境や協同関係構築は、きわめて現実的に問われる課題であるとの共通認識の深めつつ、地域のおかれた状況の中で各自の研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由 理由の第1点は、2020年4月からのコロナ禍の拡大による生活環境の変化に伴う大学や研究環境の変化、特にリモート方式による授業展開への準備は、共同研究者にとり研究を一時的に棚上げ状態にせざるを得なかったほどエネルギーを要することとなった。研究会自体もzoomによる研究会を含めて4回ほどであった。第2は、研究代表者の退職による首都圏への転居が、研究の進捗に大きな影響を与えた。コロナ感染拡大に対する首都圏行政の対策や規制等により、移動をほぼ停止せざるをえない状況が年間を通して生じた。そのことは、具体的にいえば調査対象としている宮城県内の施設や対象者にはあえず、行くことが可能となったのも2回しかなかった。退職後の研究計画として、本研究に継続する計画も立てていたが進めることはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、第1に、社会教育施設である博物館教育の理論的研究を牽引しているアメリカのJon FalkやイギリスのHooper-Greenhillたちの理論を学習のプロセス研究として検討する。そのことはコロナ禍の状況が予測不可能であるから、本研究に継続する研究としての理論研究に時間を割くことを考えている。すなわち、現行研究の日本における実践的研究がグローバルな理論につながることが可能なのかのかどうかを検討したい。 第2に、すでに、博物館教育・美術館教育におけるワークショップや講座の実施における学芸員と地域の専門か及び学校教員の連携・融合、私たちは越境という用語で特色づけており、ここでの教育のプロセスと効果の研究課題を進めてきたが、これまでは美術館・博物館の利用者の調査はあらかじめ用意した質問紙による調査が中心であり、学びのプロセスはブラックボックスのままにとどまっている。そこで、今後は来館者の承諾を得て、鑑賞・見学の過程をデジタル機器を用いて映像情報や音声情報を収集し、これらを見ながらインテンシブなヒヤリング調査を行う。この記録をHooper-Greenhillの提唱する「解釈戦力」の分析方法を用いて分析したいと考えている。 2021年度は研究代表者と共同研究者の研究を社会教育学会やICOMの研究会において報告を予定しているが、調査を進めてまとめていく準備をしている。
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Causes of Carryover |
研究代表者及び共同研究者における次年度使用額が生じた理由は、上述したように研究の遅滞が主なものといえる。特に研究代表者の首都圏の転居先から、他県への移動が長期にわたり、不可能となったこと、また調査対象地での訪問実施のみならず調査対象者とのリモートによるインタビュー調査等も生産的なものとはならなかった。 2021年度は、理論的な研究と調査対象地の変更や調査研究の方法のデジタル化を進めて、これまでの実証的な研究とまとめることとし、10月の学会で報告したい。また、台湾の大学及び社会教育施設でのシンポジウムで報告したいと考えている。
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