2021 Fiscal Year Research-status Report
東京府青山師範学校附属小学校にみる「学校と家庭の連絡」に関する史的研究
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18K02314
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山梨 あや 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (40439237)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 東京第一師範学校附属国民学校における学童集団疎開 / 疎開受け入れ地域との関係性の構築 / 学校と家庭の連絡 / 疎開受け入れ地域間の連絡協力関係 / 学校を取り巻く「地域」の認識 / 従来の学校教育の相対化 / 疎開児童「母の会」の活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、東京第一師範学校男子部附属国民学校(旧東京府青山師範学校附属小学校)の戦時下における「学校と家庭の連絡」に関する研究を行った。 既に入手していた同附属国民学校の学校資料(学校誌『学校と家庭の連絡』、特に疎開関係資料の分析を進めるとともに、当該時期に疎開を実施した他の師範学校附属国民学校(東京第二師範学校附属国民学校)、東京の公立小学校、私立小学校の学童疎開に関する資料や先行研究の比較検討を行った。その結果、東京第一師範学校附属国民学校では、他の師範学校附属国民学校や私立小学校のように保護者の支援等を積極的に活用して「より快適な」疎開生活を送るのではなく、他の東京都の公立小学校における疎開の在り方から逸脱せず、「足並みを揃える」努力をしていたことが明らかにされた。 同附属国民学校の疎開に関しては、第一次疎開の受け入れ先である長野県松本市の地域資料に関する調査を実施し、疎開受け入れ地域の状況についても検討を進めた。その結果、書類上の受け入れ先のみならず、受け入れ先の近隣地域の小学校や地域団体(婦人会など)が従来の協力関係を活かして疎開生活の維持・支援にあたっていたこと、さらに附属国民学校側でも受け入れ先の地域との良好な関係性構築のための詳細な注意事項を保護者に対する「連絡」の中で伝達していたこと、などが明らかにされた。これは「疎開」を通して同附属国民学校が初めて学校が存在する「地域」との関係性構築の重要性を認識し、かつ従来の教育のあり方を相対化する契機となるものであった。この研究成果は第80回日本教育学会大会(オンライン開催)において口頭発表した。 今後は、疎開受け入れ地域側の資料、調査過程で発掘された疎開児童の綴方などの分析を進めると同時に、疎開経験者からの聞き取りによって疎開の全容及び疎開下の「学校と家庭の連絡」について把握する研究が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に第一師範学校附属国民学校において疎開を経験している方とコンタクトは取れているものの、コロナウイルス感染症の拡大に伴い、疎開経験についてお目にかかってお話を伺うことが困難な状況が継続している。感染症の状況によっては、書面による調査に切り替えることで現下の問題を克服できると考えられることから、「おおむね順調に進展している」とした。 また、地域資料の発掘などに関しては、感染症の状況によって、図書館・文書館等の開館時間の短縮や県外からの来館調査が禁止されていた時期がある。この点については、徐々に他都道府県からの来館調査も受け入れる状況が見られるため、「おおむね順調に進展している」とすることが妥当であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
東京第一師範学校男子部附属国民学校の疎開下における「学校と家庭の連絡」に関しては、疎開経験者の方々からの聞き取り調査(もしくは書面によるインタビュー調査)を実施する他、疎開受け入れ地域及び近隣地域の資料収集・分析、さらに児童が「謝恩」として受け入れ地域に残した絵画や綴方から、同国民学校の疎開の全容及び疎開下における「学校と家庭の連絡」について明らかにする。 東京府(1943年より東京都)下の公立小学校に関する「学校と家庭の連絡」については、継続的に学校発行の保護者向け通信誌の収集・分析を行っている。上記附属国民学校と比較検討を行い、同附属国民学校の特殊性を明らかにすると同時に、1900~40年代にかけての東京府(都)の小学校における「学校と家庭の連絡」に関する動向の全体像の把握に努める。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の影響により、地域資料の閲覧調査などが不可能な期間があり、当初予定より旅費等の支出が削減された。また、同様の理由により、学会もオンライン開催となり、当初していた旅費支出などが生じなかった。 次年度は感染症の状況を考慮しつつ、地域資料の調査・発掘、疎開経験者への聞き取り、さらに「学校と家庭の連絡」関係資料(主に古書)の支出によってこれらを支出する予定である。
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Research Products
(2 results)