2022 Fiscal Year Research-status Report
親権制度、福祉制度と教育制度の境界についての実証的歴史的研究
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18K02318
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
吉田 昌弘 淑徳大学, 教育学部, 教授 (80624915)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 教育制度 / 家庭 / 保護者 / 就学義務 / 保育 / 倉橋惣三 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画調書作成時の予定にはなかったが、自治体教育史の編纂に関わる機会を得たので、本事業の研究の一部をそれに即して展開することとした。本年度は、全11巻11冊のシリーズのうち第11巻に2編の論考を掲載した。二点いずれも学校教育制度と親権制度との関係についての考察を含んでいる。 「子どもの就学の状況と行政・家庭」では、行政の統計の上で就学率向上が著しかった明治30年代について、統計上の不就学者、居所不明者、行政が把握できず統計上に表れない子どもを含めた状況を描き、それを、子どもに関わる、保護者の責任・権限と、行政による就学普及の、矛盾が表れる様相としてとらえている。「PTAの活動と保護者の意識」は、学校の教育活動や運営にかかる金の一部を「後援」するとともに、子どもの学習に必要な学用品を調達し支給する団体としての後援会が、戦後GHQと文部省の政策によりPTAに改組され、さらに昭和40年代に行政によって社会教育団体としての位置づけが強調されるまでの変遷を視野に入れて、その活動と、保護者の意識を描いた。また,この論考を通して,学校と,子どもの保護者と,地域社会の三者関係をとらえる上での視点も得られた。 また、それらに関し、役所に保存されている史料を、実際に足を運んで調査し、関係する史料を収集した。 倉橋惣三(1882~1955)の保育に関する著作や講演筆記を検討し、幼稚園や保育所と家庭の関係について検討を行い、成果の一部をもとに学会で研究発表を行った。2021年度の発表で扱った「保育概論」(1928年)を中心資料として、およそその時期から『系統的保育案の実際』(1935年)に至るまでを対象とした。倉橋惣三の保育論の児童保護的側面と教育的側面の関係における家庭の意味についての考察を含んでいる。 (倉橋惣三の保育論について、関連する発表を令和5年度にも行う予定。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症対策にかかる図書館等の利用制限により、当初予定した研究をスムーズに進めることに差しさわりもあったが、前年度までに変更した方向で研究を進展させることができた。 「研究実績の概要」で述べた通り、自治体教育史の編纂に関わる機会を得たので、本事業の研究の一部をそれに即したテーマで行えるように変更し、その方向で進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症対策にかかる図書館・文書館等の利用制限もあり、また、自治体教育史の編纂に関わることになったので、それにあわせて計画を変更して研究を推進してきた。既に当初の計画に相当する研究成果を挙げ得たと考える。 当初の研究計画に記載した資料調査の中でこれまでできなかったことの一部を進行したい。 自治体教育史の中での業績を発展させる研究を構想したい。 倉橋惣三に関する研究を重点的に推進したい。 所属機関変更により研究拠点が替わり、研究代表者に関わる人的な環境が変化するとともに、文献収集に必要な旅費が減少することとなった。本研究の着想のもとになった研究者間の交流を確保するため、関連する分野の研究者の招へいを行って、本研究を含めたそれぞれの研究の協同を進めるとともにより学際的な展開に資するようにすることも考えたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症対策にかかる図書館、文書館等の利用制限等により研究のスムーズな進行に差しさわりがあった。 研究計画調書を提出した後に、所属機関変更により研究拠点が替わり、研究代表者に関わる人的な環境が変化するとともに、文献収集に必要な旅費が大きく減少することとなった。本研究の着想のもとになった研究者間の交流を確保するため、関連する分野の研究者の招へいを行って、本研究を含めたそれぞれの研究の協同を進めるとともにより学際的な展開に資するようにすることも考えたい。 図書館、文書館等の安定的な利用ができるようになった状況のもと、当初予定していた調査のうちこれまでできなかったことの一部を進行したい。
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