2018 Fiscal Year Research-status Report
インクルーシブな社会を実現する学校の原理と構造に関する研究
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18K02333
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
福田 敦志 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (10325136)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インクルーシブ教育 / ドイツ・ブレーメン州 / 生活指導 / 授業づくり / 教育課程編成 / 教職員の協働 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、インクルーシブな社会を実現する学校教育の原理と構造を明らかにすることである。とりわけ、インクルーシブを鍵概念とした先駆的な実践を展開しているドイツ・ブレーメン州における研究および実践動向に着目しながら、①ブレーメン州におけるインクルーシブ教育の実現に向けた教育制度改革の到達点と課題、②ブレーメン州におけるインクルーシブ教育を理論的かつ実践的に主導しているRoland zu Bremen Oberschule(ローランド上級学校;以下、RBOと略す)の教育課程の全体像、③RBOにおける授業と生活指導の理論的かつ実践的な到達点と課題、を明らかにすることを主たる目的とする。 研究初年度である平成30年度においては、ドイツ・ブレーメン州におけるインクルーシブ教育の状況に関する資料ならびに、RBOにおける授業と生活指導に関する研究文献や資料を収集し、分析を行った。そのなかで始業前の時間に貧困家庭の子どもを対象とした朝食の提供を行ったり自治的活動に参加したりすることを通して、安全と安心が保障された学校空間を創造する主人公として子どもたちが立ち現われてくる仕掛けがなされていることが明らかとなった。また、「生徒起業」を中心とした学習プログラムを展開することで、地域で生きることを可能にする知恵とちからの形成ならびに他者との共同の経験を保障しようとすることが、RBOの教育課程において重要な位置を占めていることを明らかにした。加えて、言葉の指導の専門家やソーシャルワーカー、移民の背景がある子どもに対するドイツ語教授の専門家たちが教師とともに授業づくりに参加しており、教育における多職種協働が意識的に実践されていることを明らかにした。 令和元年度においては、RBOにおける教育課程の全体像を明らかにすべく、現地調査を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RBOに関する研究文献や資料を分析した成果に基づき、「多職種協働実践の展開と課題ードイツ・ブレーメン市での実践から」(『よくわかるインクルーシブ教育』ミネルヴァ書房、2019年5月)にまとめることができた。 また、ブレーメン州における教育制度改革に関わっては、ZuPやReBUZといった支援センターの位置と意味に関する研究文献を中心に資料収集を行うことができた。 これらの研究成果に基づき、令和元年度に実施予定のブレーメン州およびRBOでの実地調査における調査項目を整理することができ、実地調査の見通しをつけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に検討した調査項目に基づき、令和元年11月頃にブレーメン州およびRBOに赴き、インタビュー調査や授業の参与観察ならびに意見交換等を含めた実地調査を行う予定である。 また、引き続き研究文献や資料の収集・分析を続けつつ、ドイツでの実地調査の成果も踏まえながら、関連する学会や研究会等で報告・問題提起を行い、情報交換を行っていく。
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Causes of Carryover |
本研究では、ドイツ・ブレーメン州における教育制度改革の到達点と課題ならびにRBOにおける教育課程の全体像を明らかにすべく平成30年度中に現地調査をする予定で旅費を確保していたが、先方の都合により、令和元年11月に現地調査を実施することになった。そのための旅費等を次年度に繰り越す必要が生じた。 令和元年11月実施予定の現地調査では、ブレーメン州の教育行政関係者への聞き取り調査やRBOでの参与観察ならびに教職員への聞き取り調査を行う。そのための海外出張旅費として、繰り越ししたほとんどの経費を使用する予定である。
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