2018 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ合衆国における教育長免許制度と養成・研修の対応関係に関する実証的研究
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18K02343
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Research Institution | Kaichi International University |
Principal Investigator |
八尾坂 修 開智国際大学, 教育学部, 教授 (20157952)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | superintendent / academic preparation / alternative system / professional experience / continuing education / renewal system |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、アメリカ全州の教育長に関する規定集や関連論文の分析を通して教育長免許・養成政策の今日的特徴(概要)について考察した。明らかになった知見は次の通りである。第1に、教員の場合と同様に免許状の更新制や上進制が定着しており、継続教育を求めていること、修士号取得プラス30単位~60単位、あるいは博士号取得を期待している州が多いことである。しかもNPBEA組織による教育リーダーシップ専門職基準が各州の養成カリキュラム基準に影響を与え、内容上の充実が20世紀末よりも高度化している。 第2に、教育長養成において従事の伝統的な大学院における養成のみならず、州認可のものと学区当局、初等・中等学校長会のような専門職団体あるいは一部の民間機関によるオルタナティブルートも定着していることであり、オルタナティブの概念を多義的に捉えることができた。しかも民間機関(ブロード財団)による教育長養成プログラムが州認可ではないにもかかわらず存在し、修了者は都市学区を中心に学区教育長や教育委員会幹部職としてのポストに就いていることも明らかであった。ただしいずれのルートを導入するにしても「募集、選抜・入学基準の厳格さ」「プログラムの目標・理念」「コースカリキュラム内容」「有能なメンターによるインターンシップなどの500時間相当の実地体験」「専門のテニュア教員の存在」の視点から効果的な教育長養成のあり方を各州の免許政策や大学院等での養成において共通認識しておくことが必要であることである。 なお、教育長免許資格要件の一つとして教育リーダーシップについての筆記試験(School Superintendent Assessment:SSAなど)を実施する州もみられ、特定地域課題に対する卓越した対応能力を求めるのも新たな傾向である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の計画をおおむね実施することができたが、各州の免許規定からは理解し難い情報を看取できたことから、分析した事柄の精確さを期するため各州にメール等で事実確認をする必要がある。また大学院の好事例、民間における教育長養成の具体的内容についても情報を入手し、子細に検討する必要があった。
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Strategy for Future Research Activity |
教育長養成において伝統的な養成とともにオルタナティブな養成ルートによる教育長免許資格を定着させ、今日の教育長養成のあり方に適合した方策を導入しているマサチューセッツ州の免許政策の実態について具体的なデータに基づく特徴、導入の背景等を探るため、州教育委員会担当者に訪問調査を行う(2019年10月)。また大学院博士課程教育行政プログラムの特徴を探るため、実績のあるハーバード大学教育大学院のカリキュラムの内容について担当教授にインタビューを行い、具体的な特徴(専門科目カリキュラム、学生プロフィール、就職状況、レジデンシー[インターン]プログラム、博士論文の内容、指導体制)を探る(同上時期)。 またブロード財団の民間教育長養成プログラムの背景、今日的特徴についても情報収集を行い、その効果と課題について明らかにしたい。 さらに教育長の免許資格を要求していない州(ハワイ州、アラバマ州、ミシガン州など)についてその理由や歴史的経緯を探るとともに各州間の教育長養成要件の同質性、異質性について歴史的推移を踏まえつつ子細に検討することにしたい。そのためにも全州レベルで行われた1920年代、1930年代、1940年代、戦後の1950年代以降の10年ごとに行われた専門職団体(American Association for School Administrators'AASA)の分析報告を入手・活用することも必要となる。
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Causes of Carryover |
169,000円ほど予算が余った理由として、2018年度予定のアメリカへの海外調査を2019年に調査内容を充実させて行いたいと考え、実施を延期したことが挙げられる。8の今後の研究推進方策で調査内容を示す訪問調査を2019年度10月に行うこととしている。
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