2019 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ合衆国における教育長免許制度と養成・研修の対応関係に関する実証的研究
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18K02343
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Research Institution | Kaichi International University |
Principal Investigator |
八尾坂 修 開智国際大学, 教育学部, 教授 (20157952)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 教育長養成プログラム / 博士・教育スペシャリスト学位 / 教育長免許状更新・上進制 |
Outline of Annual Research Achievements |
アメリカにおける教育長の要成・研修に着目すると、歴史的に免許資格と養成、更新・上進制の連結が特徴的である。免許資格要件の特徴として以下の点を見出すことができた。 ①発行される免許状は包括的な行政免許状あるいは教育長固有の免許状である。②博士号あるいは教育スペシャリスト学位(博士論文を提出する必要のない准博士号)取得の要請。③教職経験や行政経験を要求しているのが歴史的特徴。④インターンシップ充実への州間差異。⑤教育長独自のテストを要求する州の存在。⑥上進制を導入する州(10州)のなかで更新を認めず上位の免許取得を求める州の存在。⑦伝統的な大学院養成プログラムに対して州教育長会のような専門職団体、民間によるオルタナティブ養成・研修の存在。教育長養成プログラムの課題として、ア.入学募集・選抜、入学、イ.プログラムの目標、哲学、ウ.養成の核となるコースカリキュラム内容、特に実地体験の重視、エ.テニュア教員の存在といった基本的な視点、要素を共通認識して高める質保証が養成関連機関に求められる。 また教育長免許資格の更新制・上進制との関わりで、職能成長の機会が求められていた。その際、特徴的なことは、メンタリング制度(実績のある教育長経験者によるサポート、相談、コーチング)を導入している州が多いことである。メンター・メンティのマッチング、メンターへの研修、タイム・スケジュールなどのあり方も課題であるが、受講者にとってメンタリングの効果は高い。日本の校長や教育長といった学校行政職にも適用可能との示唆が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカの教育長の免許資格要件について、全州の免許規程集を通して特徴を見い出すことができた。日本でもこれまで先行研究がなかっただけに、研究上の意義はある。 特に教育長職に対して要求される学位は修士号以上であり、博士号を要求する州も14州存在し高度化していることもある。ただし代替として、教育リーダーシップ修士号、さらには上位の教育スペシャリスト学位(Educational Specialist degree、准博士号)を求める州も多いという”新たな知見”を得た。 また効果的な教育長養成プログラムは、伝統的あるいはオルタナティブルートを取るにしても”質保証”を高めるべき課題を提起できた。特に、インターンシップ、実地体験の重視である。ア.多様なグループの生徒、教職員の臨床実践、イ.熟練のメンターによる実効性のあるインターンシップ(期間、質)、ウ.コースワークと演習の適切な履修方法、エ.インターンシップ期間中インターンに対する財源支援が望まれてくる。
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Strategy for Future Research Activity |
アメリカの教育長の職能開発として、新任教育長に対するインダクション(導入教育)の特徴を探る。校長のインダクション(18州)に比較し、教育長のインダクションについては開発途上であることが指摘されている。 先導的な州として、ケンタッキー州、マサチューセッツ州、テキサス州に対して担当者へのインタビューを含め、実証的な考察を行う。カリキュラム内容、メンタリング・コーチングシステム、スタンダードに基づく教育長評価システム、インダクションプログラムへの受講者の評価状況、インダクション取り入れの背景(教育長の離職防止、リーダーシップ能力向上策)について、考察を進める。 また、現職教育長の職能成長の機会として、専門職団体(全米学校行政職協会;AASA)や先導的な大学が行う教育長リーダーシップセミナーの特徴も探ることにしたい。
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Causes of Carryover |
(理由) 2021年度に購入した方が良いと考えられる外国文献図書があったこと。2020年1月からコロナの影響もあり、国内外での文献収集作業が滞ったことである。 (使用計画) 研究計画を遂行する上での新たな文献入手と学会大会発表参加への費用として使用する。
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