2018 Fiscal Year Research-status Report
現代プラグマティズムの市民学習と民主主義―教育の公共性の比較研究
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18K02346
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
上野 正道 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (50421277)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シティズンシップ / 民主主義 / 学び / 学校教育 / 教育の公共性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代プラグマティズムと民主主義の課題を教育の公共性の比較から明らかにするものである。2018年度の研究として、12月にニュージーランドのロトルアで開催されたオーストラルアジア教育哲学会第48回大会で、"An Analysis of the Educational Practice of Manabi"というタイトルで共同発表をおこなった。その中で、日本における「学び」の思想が西洋のlearningとどのように重なり、またどのように異なるのかを考察した。7月に、台湾の国立嘉義大学の洪如玉教授を一般社団法人東アジア教育研究所の協力のもとで上智大学に招聘し、アジアと西洋の教育の比較について研究を進める交流を実施した。8月に、ガート・ビースタ著の『教えることの再発見』を東京大学出版会より監訳として刊行した。ビースタは、オランダ出身で、現在はアイルランドの大学で教鞭をとるが、もともとデューイのプラグマティズムの思想を研究し、民主的なシティズンシップ教育の研究にも携わる世界的な教育学者である。ビースタの翻訳書の刊行をとおして、アメリカのプラグマティズムや民主主義の教育思想とは異なる、ヨーロッパでのその受容を明らかにすることができた。また、ビースタを山梨学院短期大学で開催された教育哲学会大会に招聘し、課題研究のシンポジウムを実施することができた。さらに、2019年3月に、ジョン・デューイ著『デューイ著作集6教育1 学校と社会、ほか』を東京大学出版会から訳者代表として刊行した。デューイの著作集の翻訳によって、プラグマティズムと民主主義の教育思想について理解を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体的な進捗状況として順調に進んでいる。ビースタの翻訳書の刊行によって、ヨーロッパでのプラグマティズム思想の批判と発展について考えることができた点は、教育の公共性の比較研究として十分な成果となりうるし、デューイ著作集の翻訳刊行は、当初の予定よりも時間を要したが、彼の思想の原著を的確に理解し考察することで研究の土台を固めることができた。オーストラルアジア教育哲学会の国際学会で、日本の学びと民主主義について発表する機会を得ることができた点も十分な成果であると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、まずはデューイ著作集の次巻を刊行し、デューイのプラグマティズム思想、民主主義教育思想をより深く理解する機会とする。さらに、8月に東京大学、学習院大学で開催される世界教育学会(WERA)のシンポジウムで共同発表をする予定である。また、12月の香港で開かれるオーストラルアジア教育哲学でも発表することを検討している。これによって、現在プラグマティズムの市民学習と民主主義の教育を比較的な視点から接近し明らかにすることができると考えられる。
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Research Products
(3 results)