2020 Fiscal Year Research-status Report
シュタイナー学校における教員養成プログラムを支える理論とその実態の解明
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18K02347
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
井藤 元 東京理科大学, 教育支援機構, 准教授 (20616263)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シュタイナー教育 / 教員養成 / 道徳教育 / フォルメン / 芸術教育 / 脳波測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、2019年度より引き続き、シュタイナー教育における教師の働きかけの意味を科学的に裏付けるべく、シュタイナー教育における音楽(楽器演奏)の場面において実践者の脳波がいかなる状態になっているかを測定した。また、シュタイナー教育独自の実践であるフォルメン線描の特質を明らかにすべく、写仏実践時の脳波とフォルメン線描実践時の脳波の比較検討を試みた。その成果は、研究業績欄に記した2件の研究論文および1件の学会発表のうちに結実した。さらに、『シュタイナー学校の道徳教育』(イザラ書房、2020年)において、シュタイナー教育特有の道徳教育のありようを描き出すとともに、道徳教育を担う教員がシュタイナー教育においていかに育成されているかを明らかにした。そして『ワークで学ぶ発達と教育の心理学』(ナカニシヤ出版、2020年)において、認知的徒弟制や正当的周辺参加論についての解説を行い、編者をつとめた。また、現代アメリカを代表する教育哲学者ネル・ノディングズの未邦訳書を小木曽由佳との共訳で訳出した(『人生の意味を問う教室―知性的な信仰あるいは不信仰のための教育』(春風社、2020年))。その他、『ドイツ文化事典』(丸善出版、2020年)においてシュタイナー教育の解説を行い、さらには『記者トレ-新聞記者に学ぶ観る力、聴く力、伝える力』(井藤元監修、日本能率協会マネジメントセンター、2020年)を刊行した。また、雑誌『教育学研究』において、広瀬俊雄、遠藤孝夫、池内耕作、広瀬綾子編『シュタイナー教育100年 80カ国の人々を魅了する教育の宝庫』(昭和堂、2020年)の図書紹介を行うとともに、「図書新聞」において、ルドルフ・シュタイナー著、高橋巌訳『バガヴァッド・ギーターの眼に見えぬ基盤』(春秋社、2020年)の書評を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの影響で国内外のシュタイナー学校における調査を行うことが困難になったため、当初の予定通り研究を進めることが叶わなかった。しかしながら、オンライン会議システムを活用することで、現役のシュタイナー学校教員へのインタビューを行うことができた。その成果の一部は井藤元『シュタイナー学校の道徳教育』(イザラ書房、2021年)のうちに結実している。2020年度は、新型コロナウィルスの影響で研究活動に対する制限が多くなったが、コロナに左右されない活動(翻訳や文献研究、書評や図書紹介)を中心に研究を行うことにより、研究業績一覧に記したような成果を挙げることができた。とりわけ、小木曽由佳との共訳により訳出した、現代アメリカを代表する教育哲学者ネル・ノディングズの著書『人生の意味を問う教室―知性的な信仰あるいは不信仰のための教育』(春風社、2020年)は、シュタイナー学校における教員養成のありようを分析する上で参考になるのみならず、今後の教員養成のあり方を考えてゆく上で、示唆に富むものであった。本書でノディングズが提案するのは、学校の外部へと追いやられた実存的問いを公教育(とりわけ公立学校)のカリキュラムに招き入れるというアイディアである。単にそれらの問いに居場所を与えるというだけではない。国語、数学、理科、社会など、あらゆる教科の中で、積極的に議論していこうというのだ。神はいるか?神々はいるか?といった問題を数学の授業で扱い、私はどこから来たか?宇宙はどのようにして始まったか?を理科で話し合う。そのような問いを主軸に据えることで、学校における学びのあり方を根本から変革することをノディングズは目指している。実存的問いに満たされたカリキュラムのありようはシュタイナー教育の実践とも呼応しており、ノディングズの提案は数多くの重要なアイディアを含むものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度に実施することが叶わなかった国内外におけるシュタイナー学校の調査を行いたい。しかしながら、新型コロナウィルスの影響が長引くことも予想されるため、可能な限りオンライン会議システムを活用しながら、インタビュー調査を進めていく。先に述べた通り、2020年度はオンライン会議システムを活用し、シュタイナー学校の現役教員へのインタビューを行った。本インタビューを通じて、シュタイナー学校のカリキュラムにおける手仕事と演劇教育の重要性を再認識するに至った。2021年度は、特に手仕事と演劇教育に焦点を当て、シュタイナー学校における教員養成において、これら二つの教育実践がいかに位置づけられているのかを分析してゆく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、国内外のシュタイナー学校の調査が困難になったことにより、次年度使用額が生じた。2021年度は、可能な限りオンラインを活用したインタビュー調査も行いながら、研究を遂行してゆく。
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[Book] ドイツ文化事典2020
Author(s)
石田 勇治、佐藤 公紀他編、井藤元他多数
Total Pages
744
Publisher
丸善出版
ISBN
9784621305645
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[Book] 記者トレ2020
Author(s)
井藤 元、毎日新聞社
Total Pages
212
Publisher
日本能率協会マネジメントセンター
ISBN
9784820728399
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