2018 Fiscal Year Research-status Report
女子中等教育の大衆化と実科高等女学校設置形態の類型化に関する実証的研究
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18K02348
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
冨士原 雅弘 日本大学, 国際関係学部, 准教授 (30339238)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 実科高等女学校 / 郡立移管 / 県立移管 / 組織変更 / 県会 / 郡会 / 郡制廃止 / 類型化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究計画にしたがって基礎的史資料の収集と史料を利用可能にするための作業に重点を置いた。まず、本研究課題の採択前に収集した関連文献・史料のなかで、直接的に本採択課題の対象となるものを抽出した。次に、本採択課題に関する史料の調査・収集を新潟県立図書館、同文書館、徳島県立図書館、奈良県立図書情報館等でおこなった。新潟県の事例はすでに論文化したが、徳島県と奈良県の事例については、現在、収集した史料・基本文献の分析とデータベースを作成しつつ分析中である。現時点で、調査結果にもとづく各県の特徴的な点をあげれば以下のようになる。 新潟県の事例では、佐渡郡で繰り広げられた実科高女の郡立移管、県立移管をめぐる金沢村と相川町による激しい誘致合戦の顛末について考察した。町村地域の学校を郡立や県立に組織変更することは、町村立で学校を運営するよりも財政負担の削減につながることはもちろんであるが、それ以上に「町益」や「村益」、言い換えれば「名誉心」や近隣町村との「競争意識」が大きく作用していたと考えられる。こうした「名誉心」や「競争意識」を充足させることこそが学校誘致の意義のひとつと考えられ、今回とりあげた地域抗争の大きな原動力のひとつとなっていたことを指摘した。 徳島県の事例では、他県と異なり財政的な理由から県立移管よりも郡立移管を奨励するという施策を実施ていた点が明らかとなった。また、奈良県では小学校の女性教員が不足していたため高等女学校には教員養成機関としての役割が比較的強く期待されていたことが明らかになった。徳島県と奈良県の事例では、上述の点を軸に考察を進めて学会発表をおこない、論文化に向けて準備を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間4年間の1年目であったが、当初の計画から多少の変更はあったものの、ほぼ計画どおりに史料の調査・収集を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間4年間の2年目は、1年目に収集した文献・史料等に加え、不足分の史料について調査・収集した上で、収集した文献・史料等を整理・分析する。分析した内容については学会または研究会にて発表などを通じて同分野の研究者と意見交換をおこない、論文化を予定している。
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Causes of Carryover |
予定していた史料の調査・収集のための旅費は、ほぼ実施できたが、校務のため不完全な調査が生じた部分があり、それによって次年度使用額が生じた。次年度は、前年度の不足分の史料について調査・収集をおこなうため、それに関する費用等に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)