2018 Fiscal Year Research-status Report
フランスの農山村における小規模初等学校の存立―歴史的変遷と教育方法を中心に
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18K02351
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Research Institution | Nishikyushu University |
Principal Investigator |
赤星 まゆみ 西九州大学, 子ども学部, 教授 (50150975)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 初等学校 / フランス / 農山村学校 / 学校と地域の協働 / 小規模校 / 教育方法 / コミューン / 異年齢学級編制 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界共通の現象である農村や山間部などの顕著な人口減少と過疎化はフランスでも同様に深刻であり、農山村にある小規模校の存続や学校統廃合という問題は焦眉の急務である。本研究は、日本の状況を視野に入れつつ、フランスの小さなコミューンと小さな学校に注目して農山村部の小規模校の歴史・現状と最近の政策動向を明らかにしようとするものである。初年度の成果は次の通りである。 1)フランスにおけるフィールド調査を2回実施した。まず2018年9月に、Indre-et-Loire、Lot、Isereの各県において、見学・面談等を行い、自治体や住民の考えの聞き取り調査をした。その結果、最近の国の政策動向とそれへの地域の対応を調査することができた。また2019年3月に、事例研究としてノルマンディー地方及びフランシュコンテ地方において農山村学校とコミューンに関する地域調査を行うことができた。 2)フランスの重要な関係機関である、「農山村公立学校全国連盟(FNER)(1992年創設)」「フランス農山村首長協会(AMRF)」「教育と地域の研究所(OET:2009年に1999年創設のOERが発展)」等からの専門的知識の収集を行い、今後の研究協力関係を構築できた。 3)本研究の遂行にあたっては、上記フィールド調査、及び、国内の図書館やフランス国民教育省・諸研究機関等の公的な資源、そして専門家等との研究ネットワークを通じて入手できた資料・情報をもとに、先行研究及び政府の政策文書の検討を行い、フランスの農山村学校の置かれている今日的状況と政策動向の整理と理解を進めた。 4)さらに本研究の比較考察の深化を目指し日本における事例の収集に努めた。その好事例として「学校に地域を作る」という発想の実践である佐賀市立嘉瀨小学校の15年間の取組を研究協力者とともにまとめ、日本教育方法学会第54回大会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、フランスにおけるフィールドワークの予備調査のみを実施し、次年度の本調査を準備することとしていたが、2018年9月実施の予備調査にて「農山村公立学校全国連盟(FNER)」及び「農山村首長協会(Association des Maires Ruraux de France)」との関係構築ができ、両団体の協力の下、当該年度内のフランス調査実施が望ましいと考えられたので、次年度実施予定であった本調査を一部前倒しして、2019年3月に第1回本調査を実施した。とくに、農山村の置かれた昨今の厳しい政治的状況を反映して、次年度になればいくつかの学校は閉校になる可能性もあり、また、研究協力に内諾してくれた教員が転出するなどのリスクが生じるので、フランスの学校年度の終わらないうちに(2019年6月までに)訪問することが必要と考え、調査を急いだからである。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度以降は、2018年度の調査の結果と文献による考察を踏まえ、フランスにおけるフィールドワークをさらに実施して、農山村学校の実態と政策動向を明らかにする。とくに、様々な論点の整理を行い、理解を深めるため、次のことに取り組む予定である。 1. フランスにおける小規模校の歴史的変遷とその理念的背景及び教育的・社会的意義を考察・整理し、論文化等、成果の発信を行う。 2. さらにフランスにおけるフィールドワークを行い、その結果を整理・検討する。とくに、「コミューン間共同の教育的グループ編成(RPI)」という方策の展開例を収集・整理し、概要と課題をまとめる。また、議論の多い最近の政策動向とその展開及び主要な論点についてまとめ、学会発表等を行う。また、比較考察のため、日本国内におけるへき地校の注目すべき教育方法実践例を抽出し、対象校・地域を選定してフィールドワークを行う。 3. 2019年度は、「教育と地域の研究所(OET ex-OER)」との協力を深める。本研究所が開催する研究会に参加し、農山村の子どもの学力や特性など、「地方性(territorialite)」という概念に注目し、今後の研究を発展させる。また、農山村の小規模校に典型的な教育方法についての研究を進める。 4.フィールドワークの結果を整理・検討するとともに、必要に応じて調査結果の考察に関する専門的レビューを受ける。
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Causes of Carryover |
海外調査において、農山村部に出かけるため交通不便等があったが、現地の関係者の好意によって自家用車で送迎・案内していただくことが多かった。そのため、あまりタクシーを使用しないで済んだ。また、宿泊に自宅を提供してくれるなどのことがあり、予定よりはるかに費用支弁が小さくなった。そのため、わずかながら残額が生じた。残額は、2019年度の海外調査時の費用に充当する。
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Research Products
(1 results)