2021 Fiscal Year Research-status Report
教育学と脳科学の関係を自律性の観点から明らかにする現象学研究
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18K02360
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
福田 学 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (10598931)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 死 / 生命 / 発達 / 科学と哲学の関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度後半から着手している課題を継続して、脳科学の親学問である生物学において死がどのように考察されているのか、を明らかにする研究に取り組んだ。その結果、プログラム細胞死、有性生殖の背後にある死、異常細胞の無限分裂能、という三つの論点を析出し、これらを、たえず外へと向かう生命運動に死が新たな次元を内へと拓くことを明らかにする論点と解釈した。これらは、心理学などで既になされてきたこととは異なる仕方で、私の死とその理解を教育・発達の基盤に認め、子どもの自律性に関する諸問題に切り込む導きとなるはずである。この見通しを確かなものとするため、現象学・実存哲学においてなされてきた死の考察を改めて検討した。前年度集中的に検討したサルトルは、ハイデガー批判を軸に自らの死の哲学を確立しており、本研究はこれまでその批判をそのまま肯い、現象学と科学との接点を探ってきた。だが、その探求を有効に果たすためには、サルトルが重視する「外」の反対概念である「内」あるいは「無」・「未規定」の詳しい考察が必要であることが徐々に明らかになった。そこで、ハイデガーの死の分析を再検討し、その結果、ハイデガーとサルトルの論考は多くの部分で共通しており、両者の真の対立を明らかにし、それを統合するときに、現象学から生物学にアプローチする確かな方法が明確になる、ということが明らかになった。今後は、この考察を導きに、生物学から取り出した三つの論点を内と外の関係を明らかにする哲学的論点へと発展させることで、子どもの発達や教育にアプローチするための研究基盤を確立する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感染症対策を優先させて研究会参加などを取りやめ、考察に遅れが生じているため。
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Strategy for Future Research Activity |
遅れを取り戻し、研究を完成させる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で、研究会が中止になったために生じた。研究会での議論に応じて購入する予定であった物品の購入にも遅れが生じた。次年度 に再開される予定の研究会への参加関連費用と物品購入に使用する計画である。
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