2019 Fiscal Year Research-status Report
知的障害、発達障害の教育目標・教育評価に関する研究-資質・能力論の観点から
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18K02366
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
三木 裕和 鳥取大学, 地域学部, 教授 (80622513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
別府 哲 岐阜大学, 教育学部, 教授 (20209208)
川地 亜弥子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (20411473)
寺川 志奈子 鳥取大学, 地域学部, 教授 (30249297)
山根 俊喜 鳥取大学, 地域学部, 教授 (70240067)
赤木 和重 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (70402675)
國本 真吾 鳥取短期大学, その他部局等, 教授 (80353100)
越野 和之 奈良教育大学, 学校教育講座, 教授 (90252824)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 教育目標 / 教育評価 / 資質・能力 / 知的障害 / 発達障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
学習指導要領改訂が求める「新しい時代に必要となる資質・能力(コンピテンシー)」の概念規定とその特徴を、知的障害、発達障害の教育との関係において明らかにする研究である。特別支援学校、特別支援学級の先進的授業において、学校教員はどのような資・能力(コンピテンシー)観をもって授業を構想しているかを実際の授業実践を検討し、あわせて、学校卒業後の障害者の実態を調査する。本年度はその2年目に当たる。 本年度は、障害児教育に本来的に求められている資質・能力(コンピテンシー)は、教育学的、心理学的にどのように解釈可能であるかを、教育実践を素材に集団的検討を行った。また、中央教育審議会での議論やOECDのDeSeCoプロジェクトの内容を詳細に検討することで集団的に理解し、討論を行った。 検討した教育実践は、小学校知的特別支援学級(図工)、特別支援学級の卒業後の実態、自閉症児幼稚部の授業、肢体不自由特別支援学校の生徒理解、知的障害特別支援学校高等部の「問題行動」と理科の授業などである。理論問題として、DSMの診断基準の検討、学習指導要領作成過程における障害概念の把握、キーコンピテンシーと障害、我が国の教育の国際評価などを扱った。 研究の総括として三木裕和(鳥取大学、障害児教育学)、研究分担者として山根俊喜(鳥取大学、教育方法学)、寺川志奈子(鳥取大学、発達心理学)、別府哲(岐阜大学、教育心理学)、越野和之(奈良教育大学、障害児教育学)、赤木和重(神戸大学、発達心理学)、川地亜弥子(神戸大学、教育方法学)、國本真吾(鳥取短期大学、青年期教育学)が加わった。招聘した学校教員、研究者は下記「現在までの進捗状況」に記した。本研究は、特別支援学校、特別支援学級等の学校教員との共同研究を重視して継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先の研究目的をもとに、2019年度は3回の合宿研究会を行った。いずれも鳥取大学を会場として実施した。第1回。報告①「青年の姿から学校教育を考えるーえい子・こゆきの事例から」大島悦子(大阪市立高倉小学校)関連報告、澤田淳太郎(鳥取大学大学院)②「障害者の生涯学習を巡る動向」國本真吾(鳥取短期大学)③「土ねんどあそびを題材にしたずこうの授業」池田翼(奈良教育大学附属小学校)④「OECDによる日本の学校教育への評価を考える」三木裕和(鳥取大学)。第2回。報告①「教育実践と資質・能力」塚田直也(筑波大学附属特別支援学校)、②「理想と現状、子どもを「ミトル」って、ナニ?」吉松 薫(大阪府立光陽支援学校)③「キー・コンピテンシーと障害」三木裕和 (鳥取大学)第3回。①「DSM5は発達障害診断のハイパーインフレか」三木裕和、②「知的障害と資質・能力論、各教科、合わせた指導ってなんだ」越野和之(奈良教育大学)ほか、③「授業をとおして、子どもたちにつたえたいこと~理科・社会の実践~」塩田奈津(京都府与謝の海支援学校)④学習指導要領策定過程における障害の把握」澤田淳太郎 (鳥取大学附属特別支援学校)。 教育実践検討は小学校特別支援学級から、特別支援学校高等部、卒業後まで、幅広い年齢層の事例を扱い、知的障害の児童生徒においても、文化・科学を系統的に修得する教育実践が広汎に展開されていることが分かった。一方、競争的環境の中で自信を失い、他者への信頼を損なっている事例も広く認められた。OECDの資質能力観が中央教育審議会の議論に影響を与えている事実も確認できた。豊富な検討内容が用意でき、討論も活発に行えた。当初の計画を順調に進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度もこれまでの研究計画を踏襲し、学校教員などの実践家と大学の研究者との共同研究を継続的に行う。 小学校特別支援学級の実践においては、教育課程構想の基本的視点と教育評価の基準について実践報告を予定している。また、特別支援学校においては、自立と社会参加を念頭に置いた教育課程、授業づくりと児童生徒の変容についての実践報告を依頼する。 研究者の報告としては、資質能力論について心理学的、教育学的検討を予定しているほか、学習指導要領が学校現場にどのような影響を与えるかについても検討が必要と考えている。職業検定など、職業準備教育が広汎に進む特別支援学校にあって、教育課程と資質能力の獲得過程をどのようにとらえるかを検討する。 OECDの資質・能力論は障害のない人を前提に構想されたものであることから、障害のある人において、その資質・能力論がそのままで展開されることはありえない。特別支援学校での教育実践は、職業検定の取り組みに見られるように、特定の場面に対応した特定スキルを機械的反復的に習得させる方向に傾きやすく、今回学習指導要領が提起する資質・能力論とは異質な能力観が強い。障害のない人もある人も、共通して貫く資質・能力観を本研究で明らかにする予定である。本年も、特別支援教育分野の若手教員を積極的に招聘し、挑戦的実践を報告してもらう予定である。教育目標論、教材論、指導方法論、評価論を討論する中で、それらを貫く資質・能力観を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
研究分担者のうち、研究会参加のため旅費相当額を予定していたものの、公務多忙、体調不良などにより、参加できない者があり、その旅費を支弁する必要がなくなったため。 次年度は、こういった場合も、旅費以外の費目に適切に当てることによって、本研究の当初目的が達成されるよう、計画的に運用を図る。 本研究会は定期開催の合宿研究会を重視しているが、社会情勢などにより予定の変更が生じた場合も、当初計画が実施されるよう、臨機応変な運営を心がけることにより、目的が達成されると考える。
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