2020 Fiscal Year Research-status Report
「公文類聚」完全目録化による政策合意形成過程の明確化に関する研究
Project/Area Number |
18K02370
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
古賀 徹 日本大学, 通信教育部, 教授 (90297755)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 公文書 / 公文録・公文類聚 / 文書史料研究 / 近代教育史 |
Outline of Annual Research Achievements |
国立公文書館所蔵資料「公文書記録」類のうち「教育記録」に関する基礎資料となるものに「太政類典」「公文録」「公文類聚」等がある。研究代表者はかつて、これらの史料群の復刻版刊行に尽くしてきた(『日本近代教育史料大系』シリーズ)。それらは現在において日本近大教育史研究の基礎資料(一次史料)として位置づけられ、学界全体の研究の進展に貢献することができている。そのうち「太政類典」「公文録」には項目ごとの目録が作成されており、それにより膨大な資料の検索や全体の流れを理解しやすくなっている。しかし「公文類聚」については項目ごとの目録がまだ作成されていない。この完全目録化を達成し、明示中期以降の教育政策立案から公布・実施過程を明らかにしていくのが本研究の目的である。 歴史研究の進展のためには「文書(史料)研究」の充実がその条件となる。本研究はそのために国立公文書館所蔵資料の整理と目録作成作業を行う。 本年度は、国立公文書館への調査は「コロナ禍」という現状もあり、十分に行うことはできなかった。そのため公文書館での作業(文書の確認、複写、撮影)は必要最低限として刊行された複写版をもとに「目録」の項目入力作業を進めた。全体の8割はエクセルのフォーマットで入力を終えることができた。残された分は同館所蔵資料のうち「原本」「筆写(複写)本」との腑分けを行う作業となる。 また同文書(公文類聚)の大正期の文書を整理することを中心に、当時の教育事情について研究論文を記した。官側文書をベースとすることで、大正期の教員の研修や自己学習といった教育運動の研究にもいかすことができる。 「文書(史料)研究」分野での完成を目指し、残された作業に従事したい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、①公文類聚の撮影、②太上類典・公文録データとの照合、③政策としての〈合意〉形成過程として議会ごとにデータ整理を行う、④教員組織・現場での受容(反応)、⑤教育会や教育運動・労働運動等の外部状況と対照して考察、という流れを構想していた。 研究計画①が資料館(国立公文書館等)での史料の確認と撮影であるため、この点に関する作業に支障が生じることとなった。デジタル撮影の日程のみでなく、許可を受けてそのための史料の割り出しを行うが、どうしても時間がかかり、また密接な空間となりやすい。その分を写真版でかつて撮影したものを中心に入力作業を進めることとした。しかし、当該写真版は紙印刷を行い朱書き等が判別しにくい。原本と複写版をどのように整理するかという照合の作業は残されている。 ②の太上類典、公文録の目録化と「原本」「複写」関係の整理は終えている。これらの統合目録と解題の新たな書き起こし作業については現時点では未完成の状態である。 ③〈合意〉形成過程(各種議会レベル)でのデータとして取り出す準備は整っている。また④教員組織・現場レベルでの「受容」についてと⑤教育運動関連については論文を執筆している。
|
Strategy for Future Research Activity |
「公文類聚」は戦前期における公文書記録類のなかでも最大規模の史料数となる。残りの2割分の入力作業については、4月から9月までに終え、その後に目録の完成と凡例および解説(解題)の執筆作業となる。 原本と複写版の確認と腑分けの作業については、現在撮影の日程を調整している。入力作業中のエクセル版の情報では、館内に持ち込んだ際に史料との照合はできない。同じ文書の「原本」とその筆写による「複写」であり、文字や行のずれを「タイトル」「年」「発信」「宛先」「概要」という状態では分類が困難である。そのため同館所蔵資料を直接に見比べる作業は外せない。 現在考えているのは、この「原本」「副本」の仕分けはさらに後日、別の研究として分けて、まず史料集として刊行されていて目録のないものをまず完成させること。これを第一の作業として夏明けに完成させる。そこで解題等をしあげる。副本と原本の構成については公文書保存と公開の研究課題として二つ目の課題として整理する。 研究計画の④⑤についてはすでに論考を発表しているが、まだ個別のケースに止まる。教員組織側が公的機関との往復、あるいは交渉関係を進めていくことにより、その団体・機関内に「公文書」作成作業が発生し、その結果として「組織」がより公的な性格を帯びてくるという面(影響)もあったのではないかという発見もあった。この視点についてもさらに深め、論考を記していきたい。 以上の順序性をもって進めていきたい。
|
Causes of Carryover |
文書館での撮影作業を停止したため、作業にかかる人件費等を支出せず止めたため次年度に繰り越すこととなった。地方機関資料調査などの調査費用としての旅費交通費も中止したために次年度使用額が生じることとなった。その他に計上した分も同様の理由の経費となる。なお学会や研究大会での発表についてはオンライン開催となり、この費用もかからなかった。 以上の状況により、まとまった史料叢書類を購入して、そこから照合用データを抽出するという作業に一部変更することとなった。それにより物品費は増加している。 今後はこの作業にかかる費用を調整し、撮影とデータ入力を進めていく。
|
Research Products
(2 results)