2020 Fiscal Year Research-status Report
排他的国民教育から包摂的市民教育への質的、制度的転換の模索-欧州審議会の教育支援
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18K02386
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
吉谷 武志 東京学芸大学, 国際教育センター, 教授 (60182747)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 包摂的市民教育 / 排他的国民教育 / EU / 欧州審議会 / 多様性 / 教員養成 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は本来、本研究の最終年度の予定であったがコロナ禍の影響により、予定していたEU圏の関連学会への出席、研究機関への訪問調査、さらに関連領域の研究者による研究レビューをうけることなどができなかった。 他方、2019年度までに収集した資料、文献、関連学会、研究者との研究交流の記録等を整理し、研究機関を延長した2021年度における研究報告書の作成に向けて、資料等を分析し、考察を進めた。特に、主たる研究対象の一つである国際機関、欧州審議会(欧州評議会、The Council of Europe、フランス、ストラスブール)の市民性教育、異文化間教育に関する報告書、調査研究プロジェクトの成果物、提言・勧告等の文書についての分析をすすめることができた。 従来、市民性教育はいわば20世紀の国民国家を背景とする言語や宗教、生活習慣を始めとする文化的背景が比較的似通った、均一性の高い国民を想定して構想されてきた。しかしながら、今日では、ほぼ世界中のどの国にとっても文化的な背景の多様性が深化し、言語や宗教を異にする成員を想定して社会の統合を考えなければならなくなっている。そこで構想されているのが、本研究のテーマとして掲げている「包摂的市民教育」である。そこでは、均一的な国民を対象とする国民教育ではなく、多様性を想定した市民教育を必須のものとして社会を構築することが目指される。 本研究は、この包摂的市民教育のために構想されている教育内容、教師養成、教育制度設計について、現時点での見通しを整理しており、2021年度においては得られた知見をこの分野の海外の専門家との研究交流をとおして、さらに検証すると共に、日本の教育現実への示唆等を考察を進める基礎を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である「包摂的市民教育」について、文化的多様性が昂進している今日のEU域内での議論、新しい市民性教育の構想、国際機関での研究成果等について、基本的な文献資料の収集とインタビューによる専門家、研究者による知見の収集ができている。 また、コロナ禍により現地、ヨーロッパの国際機関や研究者を訪問しての実地調査、研究レビューはできなかったが、収集資料の整理と分析を実施できたことで、最終報告書に反映させる基本的な内容、知見について整理し、また課題も明確にすることができた。 また、コロナ禍で現地訪問ができなかったが、研究計画を2021年度に延長、実施することができるので、研究成果の公表に向けて、ほぼ研究計画は達成されている状況にあると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本来2020年度に実施する予定であった、現地への訪問調査について、事情の許す限り実施したいと考えている。この点については、コロナ禍の現状を見えれば、可能になるものと想定している。 なお、これと平行して、現下、遠隔会議方式で実施されることが多くなっている各種の学会、研究集会に参加し、情報収集と知見の検証を進めることを計画している。 また、既に知己を得ている専門領域の研究者、専門家に対して、遠隔会議方式によるコンタクト、情報交換をすることで、効率的な情報収集、研究交流ができるので、訪問が難しくなっている現状に対して、可能な限りの方策をとり、研究成果の深化を進めていく所存である。
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Causes of Carryover |
本研究の最終年度である2020年度については、2019年度までに得た知見を持って、現地(EU圏内)の専門家、研究機関、研究会を訪問し、研究交流、資料収集を行うと共に、研究レビューをうけ、成果報告書をまとめる予定であった。 しかしながら、コロナ禍により現地訪問ができなくなり、遠隔会議による交流、情報収集にとどまることになった。そのために、既に収集していた文献資料や情報をもとに知見を整理するにとどまった。 このため、研究計画、特に現地訪問による文献や資料収集、専門家との交流による知見の検証については2021年度に行うことで研究期間を1年延長した(申請し許可済み)。 以上により2021年度使用額が生じた。
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