2018 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Study on Transnational Higher Education in Non English Speaking Context
Project/Area Number |
18K02389
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉本 均 京都大学, 教育学研究科, 教授 (50211983)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南部 広孝 京都大学, 教育学研究科, 教授 (70301306)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 留学 / トランスナショナル高等教育 / 海外分校 / 英語プログラム / 国際学位 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は非英語圏におけるトランスナショナル高等教育の現状の把握につとめた。トランスナショナル高等教育の定義、その形態について、とりわけ海外分校および国際提携学大学の違い、そして疑似的な分校関係や提携関係を表明する非英語圏の大学について基礎的な概念の問題について検討を行った。 現地調査としてはポーランド、ワルシャワのポーランド日本情報工科大学、ウズベキスタン、タシケントのウエストミンスター国際大学タシケント校、そして別の資金によって、千葉大学のタイ・マヒドン大学分校での聞き取り調査を行った。研究を進める中で、トランスナショナル高等教育の周縁領域として、本校分校の関係は実際にはないが、本校の名前を大学名に関したり、日本やアメリカなどのを外国名を名前の一部に入れている、疑似的な海外大学分校のような大学がいくつか見られることが明らかになった。 これらの大学は正式な分校はないため、外国政府の管理下にあったり、外国本校の経営や運営方針に従ったり、教育上(試験やシラバスなど)の本校管理(視察など)を受けるといった制約からは自由であった。しかし、その校名に含まれる日本やアメリカといった外国のもつ高い教育水準のイメージや、ウズベキスタンのように英国大学本校の名前を持つことが、大学の環境において英国の雰囲気や高い教育水準を想像させるという点で大きな宣伝効果を持っており、現地においてポーランドとウズベキスタンの両行は授業料は安くはないものの、高い人気を博しているということであった。千葉大学のタイ分校が同様な人気を得ることができるかどうかについては今後の研究課題となるであろう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究は全体として予定どおりに進捗しており、特に現地調査としては、ポーランド、ウズベキスタン、タイでの聞き取り調査を終了している。その結果、ポーランド、ワルシャワのポーランド日本情報工科大学は「日本」という名前を冠しているが、日本の大学との分校関係はなく、その設立当初(1991)に日本のJICAなどから設立資金を援助されて、その関係で今日でも日本文化コースを維持しているに過ぎないという状況であった。 またウズベキスタン、タシケントのウエストミンスター国際大学タシケント校は、英国のウエストミンスター大学とのアフィリエーション(提携)はありものの、「分校」という扱いではなく、ウズベキスタンの大学として英国の雰囲気と水準をイメージさせる関係であることがわかった。しかし、ウズベキスタンがイスラーム主流の国であることに関しては、国家として世俗を原則としており、教育方針や内容にイスラームの性格を要請されることはないということであった。 最後に、日本の千葉大学がタイのマヒドン大学内に設置をすすめている千葉大学タイ分校についても、別の資金によって調査を行った。本校は日本の単独大学による初めての海外進出の事例として、日本の大学の海外分校の可能性を検証する事例となった。しかし、現在はまだ、マヒドン大学の構内に事務所を維持しているのみで、具体的な学生募集や教育コースの開始はまだ行われていないということで、今後の継続的な情報収集が必要とされることとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
第2年度においては、基礎的研究としては、トランスナショナル高等教育の市場における海外分校プロバイダの英語圏の国の 占有度、プログラムにおける英語の支配力について調査し、その質の保証と文化的弊害やアカデミックな不均衡の問題について 、プロバイダ側、ホスト国側の双方の視点から議論を整理する。また非英語圏の大学がトランスナショナル高等教育に参入する 動機とメカニズム、そして教育の質への影響などについて考察する。 現地調査としては、ルーマニア、ブカレストのルーマニア・アメリカン大学、マレーシアのマレーシア日本工科大学(MJIT)そして、可能であれば、チュニジア、チュニスのジャーマン・ビジネススクールを訪問し、現地で聞き取り調査を行うことを計画している。、また研究分担者や協力者により、非英語圏を含むこれまで研究実績の少ない中国語圏、アラビア語(イスラー ム)圏、ヨーロッパ諸語圏のトランスナショナル高等教育の実態について調査を計画している。特にプロバイダ側、ホスト国側のどちらか 、あるいは双方が非英語圏であるケースを選び、その進出の背景にどのような動機とそれをささえる需要があり、そのような経 営上、学術上、そして文化的問題があるかを明らかにする。 そのうえで、参加者と関係者を交えて、個別または全体会議を行い、これまでの個別の研究の進捗状況と現時点での成果について共有し、先の研究課題に関する中間的な結論を導きだす。
|
Causes of Carryover |
研究科で採択されている別の外部資金(機能強化経費)によって、当該科研の一部研究課題が共通の部分(タイのトランスナショナル高等教育の調査)において、支出(出張費)を代替できたので次年度未使用額が生じた。
|