2018 Fiscal Year Research-status Report
シンガポールにおけるアクティブ・ラーニングの評価・改善システムに関する実証的研究
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18K02392
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Research Institution | Yamanashi Prefectural University |
Principal Investigator |
池田 充裕 山梨県立大学, 人間福祉学部, 教授 (40342026)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アクティブ・ラーニング / シンガポール / PAL / コンピテンシー |
Outline of Annual Research Achievements |
1.「アクティブ・ラーニング・プログラム(Programme for Active Learning: PAL)」の効果に関する検証…PAL の導入は、2009年に出された「初等教育改革実行委員会」報告書によって提起され、翌2010年から12の小学校で第1期の試行が始まり、2011年には第2期として24校が加わり、現在はシンガポール全ての初等学校で実施されている。 昨年(2018年)度は第1期の研究校の一つであるジュロン・ウェスト初等学校(Jurong West Primary School)を訪問し、初等2年次の視覚芸術とスポーツ・ゲームの2つのPALの授業を見学し、これらの授業指導案を収集して、具体的な到達目標や評価等の項目を分析した。結果として、PALにおいては教育省が定めた「21世紀型コンピテンシー」で規定された「社会・情感的コンピテンシー(Social and Emotional Competencies: SEL)」を評価項目として用いており、“自己認知”、“自己管理”、“人間関係”といった社会性や倫理観の育成を重視した指導内容となっていることが確認できた。 2.PALのカリキュラム開発に関する検証…同校のPAL担当の主任教員にインタビューを行い、指導計画や指導プラン等の開発に関する情報を得た。初等1・2年次に実施されるPALにおいては、幼稚園での遊びを通した学びと初等学校の学習との接続を多分に意識した活動内容となっており、児童の学習活動に対するストレスを軽減し、学びの楽しさを意識づけようと図るとともに、入学時にばらつきのある児童の英語能力を踏まえて、その活用力や表現力の基礎を培うため、体験活動を通じて楽しく英語で発声・会話し、積極的に英語を用いて自身の感情や意見を表明することが重視されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.第1回現地調査の実施…昨年(2018年)度は当初の研究計画に従い、1回目の現地調査を実施し、研究パートナー校でPALの授業実践を観察・録画し、指導計画や指導プラン等の情報を収集した。また担当教員にカリキュラム開発上の工夫や課題点についてインタビュー調査を行った。 2.学会発表の準備…上記の現地調査の結果に基づいて、日本比較教育学会第55回大会(日程:2019年6月7日~9日、会場:東京外国語大学)において発表を行うため、発表申請とともに発表要旨集録原稿を提出した。 3.第2回現地調査の準備…今年(2019年)度は8月19日(月)~24日(金)にシンガポールに赴き、パートナー校を再訪し、昨年(2018年)度とは異なる2つの領域(アウトドア、美術制作)のPALの授業を見学する。また、「専門職学習コミュニティ(Professional Leaning Community: PLC)」等校内組織における、カリキュラム開発や指導計画の立案に関する具体的な情報を得て、特徴や課題点を検証する。また、他にもう1校を選定して、訪問調査を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
・今年(2019年)度は、2020年2月に3回目の現地調査を実施する予定である。その目的は、同国では毎年1月が年度始期であることから、昨年(2019年)度のPALの実績や評価を踏まえて、新年(2020年)度においてどのようにカリキュラム改善を行ったのか、具体的な情報を得ることにある。PALという具体的な教科に焦点を当てて、同国における具体的なPDCAの機能とカリキュラム改善の実態を検証する。 ・当初の計画では、PALのカリキュラム計画・開発に関して「シンガポール国立教育学院(National Institute of Education: NIE)」や「シンガポール教員アカデミー(Academy of Singapore Teachers: AST)」を調査対象機関としていたが、現地調査の結果から、PALのカリキュラム計画・開発を主導している機関は、教育省の担当部局であることが判明した。このため、学校以外の調査対象については、今後再検討を行う予定である。
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