2018 Fiscal Year Research-status Report
アセアン諸国のOOSCYに対する国際教育支援ネットワークに関する研究
Project/Area Number |
18K02394
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
乾 美紀 (寺尾美紀) 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (10379224)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荻巣 崇世 名古屋大学, 国際開発研究科, 研究推進員 (00743775)
鴨川 明子 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40386545)
中矢 礼美 広島大学, 国際協力研究科, 学術研究員 (70335694)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | OOSCY / アセアン諸国 / 教育のアクセス / 教育の質 / 国際支援ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目的は、OOSCYの問題が深刻なアセアンの国々で、どのような子どもたちがOOSCYの対象となっているのか、それを解決する方策としてどのような国際的ネットワークが構想されているのかを、アクター間(政府、国際機関、国際・現地NGO)の連携に注目して明らかにすることを目的としている。 30年度は、既存の情報の収集と整理を行うとともに、先行研究による知見を整理、蓄積すること、各研究者が担当国でフィールド調査を行うこと計画し、鴨川(マレーシア)、中矢(インドネシア)、森下(タイ)、乾(タイ・ラオス)においてそれぞれ現地調査を行った。 その結果、OOSCYの現状は、国によって異なることはいうまでもなく、国の中でも地域により大きく異なり、女子、少数民族、移住労働者の子ども、国境付近の子ども、地方に住む障害のある子どもなど、様々な背景を持っていることが明らかになった。たとえばラオスでは、地方に住む貧困家庭の子どもが教育のアクセスが厳しいこと、障害のある地方の子どもは通う学校さえないこと、峻険な地形のために学校に行くことが難しく中途退学を余儀なくされることなどが分かった。またフィールド調査の結果、山岳地帯に位置する村では教育の質が悪く、教師不足、教科書・授業時間の不足などの深刻な問題を見出すことができた。地方政府は教育予算の不足のために、OOSCYの問題を解決できていないことも確認することができた。 またOOSCYの状況が厳しい途上国では、EUや米国そして、アジアの先進国(韓国・日本)などから経済的な支援を受け、国境を越えた支援ネットワークが展開されていることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分担研究者、連携研究者が既にフィールドで築いてきたコネクションを大いに利用し、これまで調査を進めてきた地域で現地調査を進めてきたため、順調に調査を進めることができた。それぞれの研究者は大学院の時から担当国の研究をしているため、20年前後のキャリアがあるため、現地でも信頼を得ていたことがメリットであった。また、各研究者が担当国の教育事情に精通しているうえ、それぞれ海外共同研究者と協力をし、教育省や国際NGOなどにアポイントを取ることができたこと、現地で最新の情報を入手することができたことが影響していると考えられる。 分担研究者・連携研究者間のチームワークがよく、学会や研究会の際に集まって研究の進捗状況や調査計画について共有することができた。会うことができなくても常にメールによるやり取りで、調査許可書の作成、プロジェクトサマリーの作成(いずれも英語)、インタビューデータの共有など、現地調査に向けた準備や現地調査の計画・結果を確認することができたことも大きなメリットであった。 この結果、既に国際学会での発表を行ったり、国際雑誌で論文が採択されるなど、それぞれが大きな業績を挙げることができている、
|
Strategy for Future Research Activity |
ひき続き各国における状況の分析、検討を進めるが、31年度の調査の重点はインドネシア、マレーシアとする(ラオス・カンボジア・タイにおいてはこれまでの調査の結果の整理とアウトプットに重点を置くこととする)。個別国の状況についてインタビュー調査により情報収集を行うとともに、支援ネットワークに関してはまず国内連携(教育省と他の省)について整理する。次に国際連携として、主にマレーシアが国境を越えて展開するネットワークの意義や役割を検討する。ラオス・カンボジアについては、隣国タイが果たす役割を詳細に見ていきたい。最後に政府、国際機関、NGOなどが形成する連携・協働の現状と役割を次の4側面から総合的に考察する。
[支援パターン] 国際機関や国際NGOから地域NGOへの資金協力など、[協働パターン] 国際機関や政府行政機関とNGOへのプロジェクトの協力形成、[コミュニケーション] 国際機関や政府行政機関とNGOの協議や対話の頻度、[当事者の意識] 各支援機関当事者の支援、協働、対話に対する認識。
以上については、引き続き国際学会、国際的な学会誌で発表する他、32年度の日本比較教育学会の研究委員会が企画する課題研究で研究成果を公表するための準備を行う。
|
Causes of Carryover |
2018年度、研究分担者の荻巣崇世氏が産休・育休を取得し、休職していたために研究予算を使用することができなかった。2019年に使用し、研究を継続する予定である。
|
Research Products
(17 results)