2019 Fiscal Year Research-status Report
A Comparative Sociological Study for Building an Inclusive Education System to Include All Children
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18K02401
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
原田 琢也 金城学院大学, 人間科学部, 教授 (10707665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱元 伸彦 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (10770711)
新谷 龍太朗 平安女学院大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (10783003)
堀家 由妃代 佛教大学, 教育学部, 准教授 (80411833)
竹内 慶至 名古屋外国語大学, 現代国際学部, 准教授 (80599390)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インクルーシブ教育 / 統合教育 / 特別支援教育 / クイーンズランド / オーストラリア / 先住民 / 移民 / 難民 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,貧困状態にある子どもや,移民・難民の子ども,マイノリティの子どもなど,学校や社会から排除されがちなすべての子どもをいかにして学校に包摂するかをめぐって,日本国内と海外の実践を調査し,比較するものである。 国内調査は,大阪の5つの小中学校において実施してきた。5つの学校はすべて,「原学級保障」と呼ばれる統合教育実践を行っている学校である。調査からは,「原学級保障」と言っても,その認識や実践のありようは学校によって大きく異なることが見えてきた。X市の3校は,「共に学ぶ」授業スタイルを頑なに守ろうとしているが,それ以外の2校では,柔軟に抽出指導も導入されていた。いずれにしても様々な葛藤が生じていた。その葛藤は,学校の重要課題となる一方で,学校改革の原動力になっている側面も見られた。調査の結果は,『金城学院大学論集』第16巻第2号所収「日本型インクルーシブ教育への挑戦―大阪の『原学級保障』と特別支援教育の間で生じる葛藤とその超克」にまとめた。 海外調査は,オーストラリアのクイーンズランド州(QLD)の北部都市,ケアンズで実施した。この地域は,アボリジニをはじめとする先住民が多く居住すること,移民・難民の子どもが多いことが特徴である。小学校1校と中等学校1校でフィールド調査を実施した。調査の結果は,「社会的包摂を追求するオーストラリア・クイーンズランド州のインクルーシブ教育実践―先住民と難民・移民の子どもの支援に焦点を当てて」としてまとめ,日本特別ニーズ教育学会の学会誌『SNEジャーナル』第26巻に投稿済みである。 両者の比較を通して,QLD州の学校の事例では,学校外部のエージェントの関わりが大きいこと,一方,大阪の学校の事例では,生徒同士につながりを構築する「集団づくり」が重視されていることに,それぞれのアドバンテージがあることが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,日本と海外の学校で調査を実施し,その成果をそれぞれに論文としてまとめることができた。そして,その過程を通して今後の課題も明確になり,2020年度の研究方針を立てることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
大阪における調査では,「原学級保障」と呼ばれる統合教育実践と特別支援教育の考え方との間の葛藤が見られたが,その葛藤がどのような学校の変化をもたらすのかを追跡する。また,そのベースになる「集団づくり」の実践にフォーカスを絞り,そのペダゴジーの原理と方法を明らかにする。 クイーンズランドにおける調査では,前回の調査でその重要性が明らかになった学校外部のエージェントと学校の協働に焦点を絞り,学校・教師が「子ども全体・家族全体」をいかにして支援しているかを明らかにする。 両者から得られた知見を整理し,それぞれのインクルーシブ制度の長所と短所を明らかにし,今後のインクルーシブ教育の在り方を探求し,両国のインクルーシブ教育に対して提言を行う。
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Causes of Carryover |
2020年度には,2回目のクイーンズランド・ケアンズでの調査を予定している。この調査経費に充当する。
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