2018 Fiscal Year Research-status Report
A Historical Study on the Forming Process of Aboriginal Self-Governing System Over Education in Contemporary Canada
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18K02404
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Research Institution | Kagoshima Immaculate Heart University |
Principal Investigator |
広瀬 健一郎 鹿児島純心女子大学, 国際人間学部, 准教授 (80352491)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 先住民族 / 教育自治権 / 先住民族の権利 / 先住民族教育史 / カナダ地域研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、2000年の会計検査院勧告以後、現在に至るまでのカナダ連邦政府の先住民族教育政策の展開過程を、政策協議の枠組みに着目もしながら跡付けた。その結果、以下の諸点を明らかにした。 ①2000年からトルドー政権の発足までは、インディアン北方省の意思決定の場に先住民族を参画させる枠組みが形成されたものの、意思決定を行うのはあくまでも官僚であり、先住民族の主張は、必ずしも反映されなかった。とくにハーパー政権下では、先住民族とカナダ君主とによる対話集会を開催したものの、実際には、先住民族の自治権や土地権を侵害しかねない施策を展開した。②教育自治権については、連邦政府、州政府、先住民族自治体の3者による「3者教育パートナーシップ協定」を締結し、その枠組みの中で、教育自治権を保障しようとする動きが、全国的に広がっている。③「三者教育パートナーシップ協定」が広がりを見せる中で「ファーストネーション教育自治法案」が連邦議会に上程されたが、先住民族団体の強い反対により、廃案となった。このことから、今後、全国一律の法ではなく、各地の先住民族自治体の実情にあった法の策定がすすめられるのではないかとの示唆を得た。④トルドー政権では、先住民族に関わる施策については、国家財政のあり方を先住民族代表と協議し、共同で意思決定をおこなう仕組みが設けられた。先住民族教育政策についても、先住民族の意志決定が反映するような仕組みが設けられた。このような仕組みも、先住民族教育に関する自決権保障の一つの形ではないかとの示唆を得た。ただし、自由党が下野した際にもこのような仕組みが維持されるのかは不透明であり、教育自治権保障の仕組みの脆弱な基盤の上に存在していることを指摘した。 本年度は、オタワの国立公文書館にて、1940年代から1972年までを対象時期として、先住民族教育政策に関する公文書を調査、収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2000年から現在に至るまでの連邦政府の先住民族教育政策史をまとめることができた。また、1940年代~1972年までを対象とする先住民族教育に関する公文書を収集することができ、概ね、計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度に収集した公文書資料を整理・分析するとともに、補充調査を行う。収集した資料をもとに、1940年代から1972年までのカナダ政府の先住民族教育政策の史的展開を跡付け、学会発表の上、論文にまとめたい。
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Causes of Carryover |
複写を予定していた資料の多くが、電子媒体にて入手可能であるとともに、電子媒体の入手にあたり、支払いが不要であった。また今年度の調査では、購入すべき図書が思いのほか少なかったことも、次年度使用額が生じた理由である。これまで以上に徹底した古書の調査を行い、学術的価値の高い図書の購入を行いたい。
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Research Products
(1 results)