2020 Fiscal Year Research-status Report
A Historical Study on the Forming Process of Aboriginal Self-Governing System Over Education in Contemporary Canada
Project/Area Number |
18K02404
|
Research Institution | Kagoshima Immaculate Heart University |
Principal Investigator |
広瀬 健一郎 鹿児島純心女子大学, 人間教育学部, 准教授 (80352491)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 先住民族 / 教育自治権 / 先住民族の権利 / 先住民族教育史 / カナダ地域研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はブリティッシュコロンビア州の先住民族教育政策について、1989年より2020年までの施策の展開過程を、先住民族関係改善和解省(Ministry of Indigenous Relation and Reconciliation)との関わりから後付け、BC州における先住民族教育政策の制度的枠組みの一部を明らかにした。 本研究で明らかになったのは次の諸点である。BC州の先住民族政策は、先住民族の土地権に司法判断と先住民族側の土地権回復を求める強い運動、加えて、これを支持する一定数のBC州民の理解によって、先住民族の権利保障を基盤とする先住民族政策の枠組みが形成されたことである。ただ、この形成過程においては、一直線に先住民族の権利保障の体制が進んだのではなく、州首相ら為政者からのバックラッシュともいうべき政治行動を受けながらも、司法判断と先住民族自身の行動およびそれに対するBC州民の支持によって、確立されてきた。 先住民族教育政策は教育省および高等教育省と先住民族団体との協議が中心になって策定されている。だが2005年の先住民族関係改善和解省の設置過程を通じて、先住民族政策の方向性を同省と先住民族団体の代表とが協議し、以後、同省と教育省および高等教育省の協力関係のもとで、教育政策が展開するようになった。このことが、先住民族言語や文化の教科化やこれらの教科を教授する教員養成の制度的基盤となっていることを明らかにした。 また2015年以後、カナダ政府による国連先住民族権利宣言の批准、インディアン寄宿舎学校問題に対する真実・和解究明委員会の勧告、チルコッチン民族事件最高裁判所判決を受けて、「未来像の共有(Shared Vision)」政策を策定した。現在、この政策の下に、教育政策を展開している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年より広がりを見せているコロナ禍により、2020年度に予定していた現地調査を行うことができなかった。1970年代から1990年代にかけてのインデアン北方開発省の公文書資料の収集が大幅に遅れている。2020年3月よりカナダ公文書館が閉館となり、複写申請をしていた公文書資料の入手も大幅に遅れ、収集した資料の分析も遅れている。現在も、カナダへの入国が制限されており、現地調査の目途が立たない状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
COVID-19の蔓延状況を踏まえ、感染対策に細心の注意を払いつつ、現地調査を実施する。また、研究の遅れを取り戻すべく、研究期間の一年間の延長を申請する。
|
Causes of Carryover |
COVID-19の蔓延により、カナダの入国が制限され、現地調査および現地での資料収集ができなかった。研究期間を1年延長した上で、今後は、COVID-19の蔓延状況を見ながら現地調査を行う。また、現地の諸機関に対し、オンラインで資料収集できるよう協力を依頼する。
|
Research Products
(2 results)