2023 Fiscal Year Research-status Report
A Historical Study on the Forming Process of Aboriginal Self-Governing System Over Education in Contemporary Canada
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18K02404
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Research Institution | Kagoshima Immaculate Heart University |
Principal Investigator |
広瀬 健一郎 鹿児島純心大学, 人間教育学部, 教授 (80352491)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 先住民族 / 教育自治権 / カナダ地域研究 / アイヌ民族 / 遺骨返還 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、カナダ国立公文書館にて、連邦政府インディアン北方開発省のIndian Control of Indian Education Policyに関する公文書およびファースト・ネーションズ議会の刊行物を調査、収集した。またGlobe and Mail紙およびToronto Star紙における先住民族自治体が運営する学校(First Nations School)に関する記事を調査し、先住民族政策関連記事とともに収集した。調査対象時期は1965年~1995年である。これらの調査から、先住民族学校が設置されるに至った経緯や教育実践の内容等に関する情報を得ることができた。 一方、1980年代後半から現在に至るまでの社会教育施策、とくに博物館の先住民族関連施策の展開過程を、先住民族遺骨や聖遺物の返還問題を中心に跡付けた。この結果、先住民族の遺骨や聖遺物は、それらが収集されたコミュニティに返還することが前提として認識されるようになっていること、とりわけ植民地政策下ないし植民地主義にもとづく遺骨や聖遺物の収集は、たとえ合法的になされたものであっても、不道徳な営為であるとされていること等を明らかにした。とくに先住民族遺骨の返還に関する施策の展開過程を跡付けたことで、博物館と先住民族コミュニティとの関係改善策をすすめる中で、遺骨や聖遺物返還が実現してきたこと、そこでは、博物館と先住民族の「和解」と、相互理解に基づく「共同運営」が目指されてきたことが明らかとなった。また、先住民族遺骨や聖遺物の返還施策は、先住民族側からの抗議に端を発し、先住民族側からの要求に衝き動かされながら、博物館側と先住民族側の「対話」がすすめられてきたこと、この件は国家的な先住民族政策の枠組の中に位置づけられてきたことを明らかにした。この成果を論文にまとめ、『カナダ教育研究』第21号にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Covid19により3年間、カナダでの調査ができなかったため。また、公文書調査の結果、重要な資料の多くに閲覧制限がかかっており、入手困難な資料が多数存在するため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度収集した資料の分析を進め、1960年代後半から1995年までを対象時期とする先住民族教育政策の展開過程を跡付ける作業を行う。この作業を通じて、いかなる政策や制度条件のもとで、先住民族学校が設置されるに至ったのか、そこにどのような特色があるのか、この時期の教育実践の内容はどのようなものであったのかについて明らかにする。本年度末には、カナダにて補充調査を行う。
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Causes of Carryover |
Covid19により海外での資料調査ができず、3年間の研究期間の延長が必要となったため。
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