2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K02406
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
高橋 均 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (30561980)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 文化的再生産 / 社会化 / 教育言説 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「言説の社会的配分による階層の再生産」という視点から、文化的再生産の問題にアプローチするものである。本研究では、家庭における「正しいしつけ」のあり方を規定する「しつけ言説」に着目し、近年、家庭教育関連書籍で散見される「叱らないしつけ」「子どもの考え・意見を尊重し、受け入れるしつけ」を称揚する言説が、今日の支配的なしつけ言説としてたち現れていることを仮説に、哲学者・思想家フーコー(Foucault, Michel)の提示した考古学・系譜学的アプローチをベースにした言説分析の手法を用いて明らかにすることを目的としている。 研究実施計画の2年目にあたる本年度は、戦後日本におけるしつけ言説空間の再構成を念頭に、1945年から今日(2020年代)までに生産された、しつけに関する言表(テクスト)を収集しデータベースの作成に取り組んだ。具体的には、前年度から継続して、言説空間を10年刻みの年代区分として措定したうえで、各年代毎の支配的なしつけ言説を抽出することに努めた。しつけ言表の類型化にあたっては、教育社会学者バーンスティン(Bernstein,Basil)の提示した、「精密コード/制限コード」・「見える教育方法/見えない教育方法」・「家族の社会化・統制モデル」の理論に依拠した。類型化の結果、「命令型・制限コード型」「命令型・見えるしつけ」・「個人本位型・精密コード型」・「個人本位型・見えないしつけ」「精密コード・制限コード併用型」・「見える教育方法・見えない教育方法併用型」など、多様なしつけの型が析出された。現在、データベース化の作業を継続しているところである。その作業が完了したところでテキストマイニングを行い、社会―認識論的言説分析の観点から、誰が、どのようなしつけ言説を生産しているのかという言説空間の布置を描き、年代毎の支配的なしつけ言説を析出していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
他の研究課題に並行して取り組んでいるため、当初予定した通りの十分なエフォートを本研究に対して割くことができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、フーコーの考古学的・系譜学的アプローチおよびバーンスティンの家族の社会化理論・<教育>言説論に依拠しつつ、各年代の言説空間におけるしつけ言説の布置状況や再文脈化(言説の配置・脱配置・再配置)の観点から言説編制の過程を分析し、これまで必ずしも十分に取り組まれてこなかった、年代ごとの支配的言説を析出する作業を進め、戦後日本におけるしつけ言説空間の再構成の作業を完成させる。併せて、研究計画でも示したとおり、最終年度にあたる本年度では、大規模な質問紙調査を通じて、現代の親・保護者がどのようなしつけ意識を持ち、また実際にどのようなしつけを子どもに対して行っているのかを明らかにしていく。さらに、特定のしつけ意識・実践と社会階層との間に関連性がみられるのかどうかに焦点を当て、社会階層ごとに、異なったしつけ意識が拡がり、また、社会階層ごとに異なったしつけ実践が行われているのかを明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
本研究課題に対して、当初の予定通りのエフォートを割くことが十分にできなかったため、国立国会図書館における資料収集のための支出が計画よりもやや少なくなったのが、その理由である。次年度は、大規模な質問紙調査の実施を計画しているため、そのための支出に充当する必要がある。
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