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2020 Fiscal Year Research-status Report

「児童生徒理解」実践の領域横断的研究:他者理解の言説実践的特質に着目して

Research Project

Project/Area Number 18K02407
Research InstitutionHokkaido University of Education

Principal Investigator

稲葉 浩一  北海道教育大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (50750436)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2022-03-31
Keywords児童生徒理解 / 生徒指導 / 教員間連携 / 教師の同僚性 / 新任教員研修
Outline of Annual Research Achievements

2020年度は新型コロナウイルス感染拡大のため、現職教員たちへのインタビュー調査をはじめとする研究活動が実質的にほとんど行うことができなかった。そのため研究期間を1年延長し、当該年度においては文献収集等の理論的な足場固めを行った。またそれまでの調査において得ていたデータをもとに、2020年9月5日・第72回日本教育社会学会(zoomによる開催)教員志望者及び教師の力量形成部会にて、「教師は教師に何を伝えるのか ―問題経験の語りにみる「協働」の分析―」と題し、小野奈生子(共栄大学)、山田鋭生(共栄大学)、高島江(立教大学大学院)と共同発表を行った。この報告の概要としては、教師たちの児童生徒理解・生徒指導が教員同士の関わり合いと不可分な実践であるという前年度までの調査の知見を踏まえつつ、①教師たちによる生徒理解の共有の言説‐解釈実践的様態 ②生徒指導上の「抱え込み」に悩む教師に対し、他の教師たちが共同的な問題として解釈しなおす様相 ③新任教員研修において新任者が指導教員との教師とのあいだで経験する困難、とりわけ児童に対し「教師」としてのカテゴリーの喪失の危機に直面する経験 の3点を明らかにした。以上の知見が示すのは、教師が教師に伝えることは、文字化された「情報」に限らず、むしろある問題を理解するための解釈枠組や、理解のありかたそのものであるということ、さらに新任教師にとっては指導教員から「伝える」実践自体がジレンマ状況を生み出し、そのうえで新任教師が主体的に意味を読み解いていくという、教師たちの「理解‐解釈」をめぐるダイナミズムであり、定型化された児童生徒理解や教員連携言説を批判的に再検討する足掛かりとなるものである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

「研究実績の概要」において先述したように、2020年度から現在に至るまで、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大に伴い、調査対象となっている学校教育現場は混乱を極め、本共同研究の進捗も遅滞せざるをえない状況となった。そのなかでもこれまで実施した調査に加え、可能な範囲で行われた調査結果をもとにして、以下の点においては進捗を果たせたといえる。まず、文献研究をもとにした児童生徒理解観の検討に加え、児童生徒理解・生徒指導と実際的かつ概念的に不可分となる教員間連携について一定程度の知見の収集を果たすことができた。次に「研究実績の概要」において先述したように、一般的に静態的な情報の共有として語られている教員間の児童生徒理解の共有や、トラブルの対処のありかたについて、教育現場の教師たちはそれら文字化された情報だけではなく、むしろ共同的に「問題」に対する解釈枠組を立ち上げあたっていること、さらに児童生徒理解の実践を、言語による伝達ではなく自身の理解のバリエーションを示すことで、精緻化させるよりも選択肢を増やす実践を行っていることが明らかとなった。さらに第三には、新たな論点として、新任教員がこのような共同体にどのように参入いていくのか、その様態を解き明かす必要性を見出すことができた。

Strategy for Future Research Activity

「研究実績の概要」及び「現在までの進捗状況」で述べたように、新型コロナウイルス感染症の拡大により本共同研究の進捗には遅滞が生じている。本研究機関を1年間延長としたが、新型コロナウイルス感染症の拡大は収拾をみせておらず、調査実施及び新たなるインフォーマントを得ることも難しくなっている。そのうえで本年度においては、一般的に普及したzoomなどのオンライン会議システムを活用し、可能な範囲でインタビュー調査及びインフォーマントの獲得をはかっていく予定である。またオンライン会議システムを使用することで、これまでは困難であった遠隔地域に住むインフォーマントを集めたインタビュー調査も可能となっており、今年度は従来行うことのできなかった形態の調査を実施する、発展的な探求が行えるものと期待している。さらに最終年度として、これまで得てきた知見をもとに、第73回日本教育社会学会をはじめとした学会にて研究成果を報告するとともに、本科研の成果報告書を作成する。さらに研究代表者、研究協力者がそれぞれ本科研で得た知見をもとに日本教育社会学会、日本教師教育学会等の機関紙において論文化を進めていくことで、本科研の研究成果を広く提出することを計画している。

Causes of Carryover

2020年度は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、研究経費が発生するレベルでの研究活動を行わなかったため、与えられた予算は一切使用しないまま、延長期間である今年度に繰り越しした。

  • Research Products

    (2 results)

All 2021 2020

All Journal Article (1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 教師間連携のポリティクス―トラブル対応をめぐる問題経験の語りに着目して2021

    • Author(s)
      高嶋江
    • Journal Title

      立教大学大学院教育学研究集録

      Volume: 18 Pages: 47-59

  • [Presentation] 教師は教師に何を伝えるのか―問題経験の語りにみる「協働」の分析2020

    • Author(s)
      稲葉浩一、小野奈生子、山田鋭生、高島江
    • Organizer
      日本教育社会学会

URL: 

Published: 2021-12-27  

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