2018 Fiscal Year Research-status Report
教育領域と福祉領域を包括した教育費負担を軽減するための公的制度の全体構造の再構築
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18K02409
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
白川 優治 千葉大学, 国際教養学部, 准教授 (50434254)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 教育費負担 / 就学援助 / 奨学金制度 / 子育て支援 / 教育費負担軽減制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代日本社会における教育費負担の在り方を検討するために、教育費の私的負担を軽減する関連諸制度について包括的に分析し、その制度配置の構造的課題と制度接合の可能性を探究する。そして、教育費の私的負担を軽減する関連諸制度の現状や将来的構想が社会的支持を得られるかどうかを実証的に検証することを通じて、教育費負担の将来的な在り方を提示することを目的としている。具体的な研究課題として、「①個々の制度の再検証」「②制度配置の全体構造の把握」「③利用実態の全体的把握」「④制度接合・改革構想の考案」として関連制度の全体構造と再編可能性を検討した上で、「⑥社会的支持の検証」として、制度配置の現状と改革構想について一般市民に尋ねる質問紙調査を行うことを計画としている。 2018年度は、研究課題のうち「①個々の制度の再検証」「②制度配置の全体構造の把握」を中心的に進めることとし、初等教育から高等教育までの教育段階を対象とした教育費負担の軽減を目的とする国・都道府県・市区町村による制度、子育て支援制度、子どものある家庭・低所得家庭等を対象とする福祉制度について、各制度の歴史的過程・政策課題を明らかにするために文献収集・研究、ウェブによる情報収集を行った。また、2019年10月に予定されている消費税増税を背景とする「幼児教育・保育の無償化」「高等教育の無償化」等の新たに提案されている教育費負担の軽減のための諸制度の具体的内容や課題について情報収集を進めた。特に、新制度の導入により制度構成がどのように変わるかについて、「②制度配置の全体構造把握」として制度理解を深めた。これらの基礎情報の収集は、2019年度に実施を予定している実態調査の前提となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題として設定した「①個々の制度の再検証」「②制度配置の全体構造の把握」を中心に進めたことは、申請時の研究計画に沿ったものである。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、具体的な研究課題のうち、「③利用実態の全体的把握」を中心に研究を進める。上半期に各市区町村の教育委員会を対象に教育行政領域において行われている教育費の負担を軽減するための制度・政策(具体的には、就学援助、各市区町村が独自に行っている教育費負担を軽減させるための制度(給食費や交通費補助など)、市区町村による奨学金制度等)の実態を把握するための調査を行う。また、市区町村の教育行政領域の調査の実施後、都道府県を対象とする同様の調査を行う。下半期には、各都道府県・市区町村における福祉制度・子育て支援のための公的制度の実態を把握するための調査を行う。これらの調査結果を総合して、教育費の私的負担を軽減する関連諸制度の実態を把握し、課題を検討する。 なお、調査にあたっては、2019年10月に予定されている消費税増税を前提に想定されている「幼児教育・保育の無償化」「高等教育の無償化」等の諸制度の具体化に留意し、新制度の在り方を問う設問を含めるなど、制度全体の在り方を分析できるように工夫する。 また、これらの調査結果は、学会等で報告し、社会への早期還元に努める。
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Causes of Carryover |
本研究の研究費は、研究申請時の計画金額に対して、金額が縮小されての採択であった。本研究で経費が多くかかるものは2年目・3年目の調査である。そのため、それらの調査に多くの資金を投入できるように初年度は研究費の使用を抑制した。
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