2020 Fiscal Year Research-status Report
教育領域と福祉領域を包括した教育費負担を軽減するための公的制度の全体構造の再構築
Project/Area Number |
18K02409
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
白川 優治 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 准教授 (50434254)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 教育費負担 / 奨学金制度 / 教育費負担軽減制度 / 就学援助 / 子育て支援 / 学生支援緊急給付金制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代日本社会における教育費負担の在り方を検討するために、教育費の私的負担を軽減する関連諸制度について包括的に分析し、その制度配置の構造的課題と制度接合の可能性を探究し、教育費の私的負担を軽減する関連諸制度の現状や将来的構想が社会的支持を得られるかどうかを実証的に検証することを通じて、教育費負担及びその軽減制度の今後の在り方を示すこと目的としている。具体的な研究課題として「①個々の制度の再検証」「②制度配置の全体構造の把握」「③利用実態の全体的把握」「④制度接合・改革構想の考案」として既存の関連制度の全体構造と再編可能性を検討した上で、「⑤社会的支持の検証」として、関係する制度配置の現状と改革構想について一般市民に尋ねる質問紙調査を行うことを計画していた。 しかし、2020年度は研究計画を大きく見直すこととなった。2020年2月以降、日本国内において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の社会的影響が拡大していったことを背景に、2020年3月以降、コロナ禍の市民生活への影響に対して、様々な公的支援制度が検討・新設され、また、既存制度の拡充が図られた。このことから、2020年度の研究計画のみならず、本研究の前提環境が変化し、研究計画の全面的な見直しを必要と判断した。そのため、「④制度接合・改革構想の考案」「⑤社会的支持の検証」を行う計画から、コロナ禍のなかでの「①個々の制度の再検証」「②制度配置の全体構造の把握」「③利用実態の全体的把握」に再度取り組むことも必要と考え、取り組んだ。研究実績の例として、2020年5月に大学生に対する経済的支援として新設、実施された「学生支援緊急給付金制度」について、私立大学での対応状況を把握するための調査データを分析し、大規模大学では対応が困難であり、早期に学生にいきわたらなかった状況を実証的に示し、構造的課題を指摘した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年2月以降、日本国内でコロナ禍の社会的影響が拡大していったことを背景に、2020年度に計画していた研究計画を含め、本研究全体の全面的な見直しが必要と判断したためである。 この判断は、次の2つの具体的理由に基づく。第一は、2020年3月以降、コロナ禍の市民生活への影響に対して、様々な公的支援制度が新設され、また、既存制度の拡充が図られることとなったためである。教育費の私的負担を軽減する関連諸制度について包括的に分析し、その制度配置を検証することを目的とする本研究においては、検証するべき制度構造の前提が大きく変化したことを意味する。そのため、コロナ禍のなかでの諸制度の構造的把握、また利用実態の検証を進めることが必要と判断した。第二に、2020年4月に最初の緊急事態宣言が発出されるなど、COVID-19の感染拡大を防ぐための社会的措置が強く求められ、それが長期間継続するなかで、2020年度内に実施を予定していた一般市民に尋ねる質問紙調査を実施することは困難であると判断したためである。質問紙調査については、前述した本研究において検証するべき制度構造・利用実態の把握をもとに質問紙調査の項目を設定することも必要であり、その前提環境がコロナ禍で大きく変化した。さらに、郵送質問紙調査を行う計画であったため、実施可能性を模索してきたが、感染防止の観点から2020年度中に郵送調査を実施することは適切ではないと判断した。そこで、研究期間の延長を行い、調査票・調査項目の設計と調査方法(ウェブ調査への変更)の再検討を含めた質問紙調査の実施を延期することとした。 これらのことから、研究計画としては「遅れている」と評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は具体的な研究課題として、教育費の私的負担を軽減する関連諸制度について、「①個々の制度の再検証」「②制度配置の全体構造の把握」「③利用実態の全体的把握」「④制度接合・改革構想の考案」として、関連制度の全体構造とその再編可能性を検討した上で、「⑤社会的支持の検証」として、関連制度の現状と改革構想について一般市民に尋ねる質問紙調査を行うことを計画している。 今後の研究について、2020年2月以降のコロナ禍の影響と教育費負担の軽減を意図して拡充・新設等がなされた関連諸制度の構造的把握、また利用実態の検証を研究領域に含めることで、「①個々の制度の再検証」「②制度配置の全体構造の把握」「③利用実態の全体的把握」を、コロナ禍への対応を含めた内容として発展的に把握する。その上で、「④制度接合・改革構想の考案」として関連制度の全体構造と再編可能性を再度検討し、「⑤社会的支持の検証」として一般市民に尋ねる質問紙調査を実施する。この調査の実施方法は、社会状況を踏まえ、オンラインによるウェブ調査として実施することも選択肢として検討し、2021年度中に実施する。
|
Causes of Carryover |
2020年2月以降、日本国内においてコロナ禍の社会的影響が拡大したことを背景に、研究課題の内容及び方法の観点から、研究期間の延長を含め、2020年度に計画していた研究計画の全面的な見直しを行った。特に、2020年度内に実施を予定していた一般市民を対象とする質問紙調査に対して大半の支出経費を見込んでいたことから、この調査を延期することで、大きな次年度使用額が生じた。実施を延期した質問紙調査等の研究計画を再構成し、2021年度に実施することで、コロナ禍のなかでの社会調査を伴う研究として、適切な研究活動・研究費執行を行う。
|