2019 Fiscal Year Research-status Report
公営住宅集積地の地域生活と移行過程―近隣効果と集合的効力感を主題として
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18K02418
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
西田 芳正 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (10254450)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 近隣効果 / 地域形成 / 社会階層 / 移行過程 / 学校教育 / 労働市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
3つの公営住宅集積地での生活史調査、学校等における参与観察調査を継続し、その成果を日本都市社会学会、日本教育社会学会、社会分析学会において報告、学術書に論文(タイトルは「社会の形成、持続とその条件―公営住宅集積地の戦後史を事例として」谷富夫他編『社会再構築の挑戦』ミネルヴァ書房から近刊予定)を発表した。 前年度までに生活史インタビューと参与観察についての主たる部分は終了しており、本年度は記録の整備と分析作業に注力し、補足のインタビューを行う他、インタビューの記録や原稿のチェックを協力者からいただく目的での現地訪問を行ってきた。地域や学校行事の際の訪問、インフォーマルなインタビューも継続している。 当地では、住民自らが「地元」と呼び愛着を抱き、世代をまたいで定着した生活を営み、活発な地域活動、青少年育成の活動が展開されている。地域社会形成時の社会資本の未整備、子育て期の課題を共有したことから住民による共同的問題解決行動が不可避のものとして活発化し、階層的背景を同じくする新規住民の流入・定着を可能にした地勢的要因も加わることで、現在の地域と生活文化が形成・維持されてきたものと考えられる。 当地の教育・移行過程は、「地元」における非移動・非競争的なものであり、それは不可避的に学校教育とのコンフリクト、低達成状況を惹起するが、同時に、地域の諸資源に支えられて学校教育が営まれているという側面も重要である。 最終年度の課題は、補足調査の継続により3地域間の比較検討を精緻化することと並行して、日本社会全体の中に「地元」的世界がどう位置づくのかを、地域・教育研究だけでなく労働市場研究などの成果を踏まえて整理、検討することである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地域住民、関係者の方々の協力を得られたことで、3地域における生活史調査、参与観察調査を順調に行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
年度末から深刻化したコロナウィルス問題により、現地での調査活動は長期にわたって困難となる見込みであるが、収束後に追加の調査を行うことに加え、文献調査によってフィールドでの知見を日本社会全体の文脈に位置づける作業を今後進める予定である。
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Causes of Carryover |
前年度までにインタビュー・観察調査が順調に進み、現地での調査回数が想定を下回ったことに加え、年度末に予定していた訪問調査がコロナウィルス問題で不可能になったことも大きい。 問題収束とともに、現地調査を再開することに加え、公営住宅関連、労働市場と移行過程関連のテーマで東京などでの資料収集を行う予定である。
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