2018 Fiscal Year Research-status Report
ライフヒストリーで辿るフィンランド教育の源泉-「教育における平等」概念の実相-
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18K02422
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Research Institution | Tsuda University |
Principal Investigator |
渡邊 あや 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (60449105)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フィンランド / 教育政策 / 平等 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、(1)フィンランドの教育政策における「教育における平等」概念の検証、(2)教育関係者のライフヒストリー・インタビューによる「教育における平等」の検証、(3)「教育における平等」の多層的アプローチの制度化メカニズムの解明、(4)平等性を担保する教育制度の在り方についての提言、の4点を実施することとしている。 研究初年度の2018年度は、主に、(1)フィンランドの教育政策における「教育における平等」概念の検証と、(2)教育関係者のライフヒストリー・インタビューによる「教育における平等」の検証に取り組んだ。(1)については、主に文献調査により、フィンランドの教育政策文書と先行研究のレビューを行い、1960年代以降の教育政策における「平等」概念の検証を行った。まだ分析途中であるが、「平等」主義的なアプローチが、北欧型福祉国家へと転換を図った1960年代以降のフィンランドの教育政策の展開に通底するものであること、その点については現代も変わらぬままであるが近年その解釈に僅かな変化が確認できることなどが明らかになった。 平等概念の近年における変化という、文献調査に基づく仮説を踏まえ、その裏付けを得るべく、現地において、学校関係者や教育研究者、教育行政関係者らにインタビュー調査を行い、現代における教育関係者の平等観及び学校現場で目指されている「平等」の実相を描き出すことを試みた。 さらに、(1)の分析に基づき、(2)の実施のためのフレームワークの素案を作成した。これについては、現地調査を行った際に、フィンランドの研究協力者(教育研究者)から助言を受けている。その助言を踏まえ、フレームワークの修正を図り、2019年度に実施予定のパイロット調査に向けた準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初想定していたよりも、分析対象となる教育政策文書の量が多く、その分析に時間がかかっているが、そのことを除けば、概ね当初の計画通りに進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、フィンランドの教育政策における平等概念の検証をさらに精緻なものとするとともに、フィンランドの教育関係者へのライフ・ヒストリーインタビューにより、教育関係者らに共有された「教育における平等」観の検証を行い、その経年的変化や普遍的価値について、検討する。そうした取組を通じて、フィンランドにおける「教育における平等」観の実相と、その多層的アプローチの実相を明らかにし、平等性を担保する制度設計のモデルを提示することを試みる。 教育政策における平等概念の検証については、計画では、テキストマイニングを行うこととしていたが、プレ的に実施した分析では、特徴の抽出に課題が残った。そのため、検証方策については、計画通りの実施を基本として進める一方、より効果的な方法の検討も並行して実施する。
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Causes of Carryover |
当初計画では、初年度にテキストマイニングのための設備(機材及びソフトウェア)を購入することとしていたが、研究を進める中で、分析手法について再度検討を行うこととし、設備的な面での整備を次年度に先送りしたため。
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