2020 Fiscal Year Research-status Report
An empirical study on educational privatization and child poverty
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18K02425
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
山下 絢 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (80614205)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 学校選択制 / チャータースクール / ソーシャルキャピタル / クリームスキミング / 学校間格差 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の最大の成果は,義務教育段階における学校選択制の実態と課題を実証的に明らかにしたものを単著として刊行した。第1章から第3章では,学校を選ぶ側である児童生徒(保護者)の視点から,学校選択制について検討した。次に,第4章から第5章では,選ばれる側である教師の視点から,学校選択制について検討した。そして,第6章では,海外の事例として,米国におけるチャータースクールの実態と課題について検討した。終章では得られた知見のまとめと示唆の提示を行った。各章の内容は下記の通りである。
第1章(義務教育段階における保護者の学校選択行動)では,誰が学校選択を行うのかという学校選択主体の問題を社会階層の視点から明らかにした。第2章(学校選択制下における学校の特性)では,学校選択制下における学校の特性(児童生徒の集団構成上の特性)を,品川区の保護者へ行ったアンケート調査をもとに論考した。第3章(学校選択制とソーシャル・キャピタル)では,第2章と同様に,品川区を分析対象として,学校選択制がソーシャル・キャピタルの醸成に寄与するのかあるいはソーシャル・キャピタルを毀損するのかを検討した。第4章(学校選択制と関係的信頼)では,学校選択制が実施されている学校に勤務する教師を対象として,学校選択制と関係的信頼の関係について,定量的に検討した。第5章(学校選択制と教師の職務満足度)では,学校選択制によって異なった教育環境が創造されることを踏まえて,学校選択制と教師の職務満足度の関係について検証した。第6章(米国におけるチャータースクールの実態と課題)では,米国ニューヨーク市における近年のチャータースクールをめぐる研究動向を整理・検討し,新たなタイプの公立学校創設における課題を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1は,研究実績の概要でも言及したが,前年度に学校選択制に関わる総合的な考察として執筆していた草稿を,単著として刊行した(山下絢,2021,『学校選択制の政策評価:教育における選択と競争の魅惑』勁草書房)。
第2は,昨年度,学校選択制の実態や課題についても言及しながら執筆を進めていた義務教育段階における学校間格差に関する論考を,下記の書籍所収論文として今年度中に刊行予定である(山下絢「『平等』なはずの義務教育にも学校間格差がある」中村高康・松岡亮二・編『現場で使える教育社会学:教職のための「教育格差」入門』ミネルヴァ出版)。
第3は,前年度に日本における教育長のリーダーシップの多元的構造について,定量的データに基づいて分析した論考を書籍所収論文として刊行予定である(山下絢・諏訪英広(2021)「教育長のリーダーシップの構造」露口健司・藤原文雄編『子供の学力とウェルビーイングを高める教育長のリーダーシップ』学事出版)。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が最終年度になる。新型コロナウイルスの影響もあり研究実施上の制約もあるが,これまでの論考のまとめを行う。
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Causes of Carryover |
差額は,出席を予定していた国内外の学会年次大会がコロナの影響によりオンライン開催となったため旅費の使用がなかったため生じた。次年度は研究の最終年度となるため,そのまとめを行う際に参照する予定の書籍の購入費用に充当予定である。
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Research Products
(1 results)