2021 Fiscal Year Annual Research Report
A Sociological Study on Family Education Strategies that Produced Persons of Culture in Modern Japan
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18K02429
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
多賀 太 関西大学, 文学部, 教授 (70284461)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歴史社会学 / 家庭教育 / 学校教育 / 文化的再生産 / 私の履歴書 / 女性文化人 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度終了時に立てた最終年度の研究計画に従って、戦前期生まれの女性文化人の輩出過程の分析を行い、その成果を学会大会で発表し、論文に執筆した。 分析対象は、「私の履歴書」を執筆した明治・大正期生まれの女性物故者全員にあたる22人とした。自叙伝の記録から、①基本的属性(生年・没年月日、自叙伝執筆年齢、主な職歴、称号・栄典等)、②学校歴と職業経歴、③出自家族と教育環境(主な生育地、父母等の出自・学歴・職業等、きょうだい構成と出生順位、父母等による職業的意向と家庭教育の様子、家族・親族の経済資本・文化資本・社会関係資本)、④結婚と出産・子育て(恋愛・結婚・出産経験、キャリア形成に対する夫・結婚の影響、仕事と家庭との葛藤)を抽出して一覧表に整理し、それに基づいて彼女らの輩出過程の特徴を分析した結果、以下が明らかにされた。 「私の履歴書」を執筆した明治・大正期生まれの女性(存命者を除く)は、広義の「文化人」にほぼ限られており、同時代生まれの男性執筆者には「家」型ビジネスの経済エリートや官公庁・大企業経由のメリトクラティック・エリートが多く含まれていたのとは対照的であった。また、同時代生まれの男性文化人と比較した場合、彼女らは、男性たちに勝るとも劣らないほど、文化的・経済的に恵まれた家庭の出身で、しかも親による積極的なキャリア形成支援を受けている者が多かった。さらに、彼女らは、仕事と妻役割との間の葛藤や、夫による直接的なキャリア形成支援など、否定的にであれ肯定的にであれ、結婚生活のあり方が職業的キャリアのあり方を大きく左右する傾向も、男性文化エリートに比べて顕著だった。 2022年3月には、単著『ジェンダーで読み解く 男性の働き方・暮らし方』(時事通信出版局)を刊行し、その一部に、父親の具体的な家庭教育の様子をはじめとする近代日本の家族の教育戦略に関する本研究課題の成果を収めることができた。
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Research Products
(3 results)