2019 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Study on Governance at the Universities Founded by Overseas Ethnic Chinese in Some Asian Countries
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18K02430
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
大塚 豊 福山大学, 大学教育センター, 教授 (00116550)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧 貴愛 広島大学, 国際協力研究科, 准教授 (80610906)
劉 国彬 福山大学, 大学教育センター, 准教授 (00782228)
中矢 礼美 広島大学, 国際協力研究科, 准教授 (70335694)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中国 / 華人 / 東南アジア / 大学運営 / 民族アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画の第2年次に当たる2019年度には、タイ、マレーシア、インドネシアという主要な研究対象国における現地調査を当初の予定どおりに実施した。 まずタイに関しては前後2回の現地調査を実施し、バンコクの華僑崇聖大学、泰国華僑報徳善堂を訪れ、華僑・華人立大学の運営実態に関して副学長、董事長など関係者への聞き取り調査を実施した。調査大学は中国伝統医学部ならびに中国語・文化学部を有しており、中国研究、健康科学研究の拠点になることを目指していること、中国語は学士課程の4年間を通じて全学部生の必修科目となっていること、北京大学との共同プログラムを運営していることなど、タイ国内の一般の大学に比べて、中国色の強い教育プログラムを有してることが明らかになった。この現地調査の結果の一端を「タイ華僑崇聖大学の存立基盤ー社会奉仕の精神とタイ国王室の庇護」と題する論文にまとめて公表した。 マレーシアでは、華社研究センターにおいて本研究課題に関連した新聞切り抜き資料の閲覧による情報収集を行うとともに、同国の三大華僑・華人立大学である南方大学、新紀元大学、韓江大学のすべてを訪問し、大学指導者層をはじめとする関係者に対して運営における特色や問題点に関する聞き取りを行った。また、この現地調査で収集した情報をインタビュー記録としてとりまとめる作業を行った。 インドネシアについては、ジャカルタのブンダ・ムリア大学、ビナ・ヌサンタラ大学を訪れ、教員・学生に対して中国語教育に関する聞き取り調査を実施し、ジョグジャカルタのアトマジャヤ大学では創設者に設立経緯の聞き取りを実施した。また、2018年度の現地調査の結果に基づき、アジア教育学会の年次大会において「インドネシアにおける華人系大学の特徴」と題する発表を研究分担者2名が行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の主要な対象国のいずれにおいても華人はマイノリティであり、当該国と中国との国際関係の影響を受けながら、彼ら華人は歴史的に種々の民族的軋轢に遭遇してきた。自らの言語や文化や伝統を維持するために華人が創設した諸大学も所在国の民族政策や高等教育政策の変化に翻弄されながら、柔軟な対応を迫られることが少なくなかった。こうした華僑・華人立大学の創設から展開をめぐる各国の歴史的変遷に関しては、これまでの現地調査および関連情報の収集、検討を通じて、概要を描けるレベルの考察までは達成できた。しかしながら、関係者への聞き取り調査を通じて得られる主観的回顧談や陳述はさておき、センシティブな民族問題が絡む課題であるため、民族別学生比率のような基本情報さえ入手が難しい側面もある。さらに3か国を横断的に考察することに関しては未だ作業があまり進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画の最終年度に当たる2020年度には、タイ、マレーシア、インドネシアという主要な研究対象国のうち、過去2年間の現地調査において収集した各種情報・資料を改めて精査することを通じて、不足している情報があり、補充の必要があるところに絞って追加の現地調査を行うとともに、報告書の作成をはじめとする研究結果の公表に取り組む。学会での報告として日本比較教育学会、アジア比較教育学会の年次大会を考えていたが、新型コロナウイルスの感染状況の影響を受けて、これらの学会の大会が中止になったため、別の公表機会を考えなくてはならなくなった。また、研究参加者の間での検討会の開催も同様の理由により比較的困難なため、テレビ会議システムなどを通じて適宜実施することとしたい。最終報告書のとりまとめを行うが、この考察の中では、華僑・華人が深く関わる大学の当該国における教育発展に占める位置と役割に注目し、1)彼らが異境で自らのアイデンティティ保持のために如何なる戦略と具体的措置をとり、2)現居住国と父祖の地との狭間にあって、居住国の高等教育発展のために如何なる支援策を講じて来たかについて、国際比較の観点と歴史的観点の双方から、具体的、実証的に解明する。これらを通じて、わが国のアジア諸国に対する教育開発援助の在り方に対する示唆、つまり本当に役立つ対外教育支援とは何かについて考える上での知恵を得るレベルにまで到達することを目指したい。
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Causes of Carryover |
2019年度に実施を予定していた海外調査が調査対象機関の都合により年度内実施が不可能になったため。
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