2019 Fiscal Year Research-status Report
乳幼児期から学童期のふざけ・からかい行動の解釈を決定づける要因と発達的意義
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18K02443
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
小野 啓子 愛媛大学, 教育学部, 特命准教授 (40804159)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ふざけ・からかい行動 / 他者理解 / 自己意識 / コミュニケーション行動 / 遊戯的サイン / 発達的意義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日常生活場面で観察されるふざけ・からかい行動の解釈を決定づける要因と、コミュニケーション行動としての発達的意義を検討することである。研究の対象は、乳幼児期から学童期の子どもたちである。 今年度は、幼児期、特に3歳期の断的観察記録の分析を進めた。 平成30年より、乳幼児2名を対象として、養育者との日常生活場面を1ヶ月あたり2時間程度、定期的にビデオに記録していただいた。実際の記録期間は、平成30年7月から令和2年2月までの1年7ヶ月である。今回は対象児2名のうちの、年長の方の児の3歳0ヶ月から3歳8か月までの映像記録の中から本研究のふざけ・からかい行動の定義にあてはまる場面を抽出し、発話やノンバーバルサインについて詳細に書き起こし、プロトコル分析を行った。対象としたビデオの総録画時間数は660分間であり、抽出されたエピソードの総時間数は33分間であった。 プロトコル分析の結果、養育者との親密な関係性の中で、メタ・メッセージを含んだ複雑で持続的なやり取りを繰り返すことを通して、他者理解と自己理解が相補的に進行している様子が観察された。また、養育者との親密な関係性の中で、自分の気持ちと相手の気持ちの間でうまく折り合いをつけていくことを学んでいく過程も示唆され、その後の同年齢の仲間間での複雑な関係性を築いていくための基盤となっていることが推察された。 乳幼児期からのふざけ・からかい行動の受容と表出の過程を、エピソードのプロトコル分析を通して縦断的に追うことにより、その発達的な変化とコミュニケーション行動としての意義の一端が明らかになったといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は2年目に入り、蓄積された映像データから、本研究の定義にあてはまるエピソードを抽出することと、発話や、様々なノンバーバルサインを詳細に起こし、プロトコル分析を進めていくことを中心に取り組んだ。現段階までに得られた結果は、2020年3月の学会発表(日本発達心理学会第31回大会)、愛媛大学教育実践総合センター研究紀要 第38号(印刷中)にて発信することができた。 日本発達心理学会2019年度大会(第30回大会)において、エピソードの抽出と記述の方法について様々なご提案をいただき、その中から、今年度は特に、一つ一つのエピソードの終了のしかたに着目して、それぞれのエピソードを詳細に書き起こした。 その結果、今年度の分析の中心となった3歳期の幼児と養育者との間でのふざけ・からかい行動のエピソードのプロトコル分析からは、この時期のふざけ・からかい行動が、表象機能の発達や、他者理解、自己理解を背景として表出される、メタ・メッセージを含んだ複雑で持続的なやり取りであり、コミュニケーション行動の一様式であることが確認された。このことは、ふざけ・からかい行動の発達的意義について検討するうえで大きな意味があるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
乳幼児期の縦断観察については、これまでに蓄積している映像データの中で、まだ分析の対象となっていない0歳期から2歳期までと、3歳8か月から4歳8か月までのエピソードの抽出と分析を試みる。 乳幼児期のふざけ・からかい行動の理解と表出の過程を縦断的に追うことで、行動の発達的変化を捉え、また、エピソードのプロトコル分析を通して、あらためてコミュニケーション行動としての意義を考察する。 今後はすでに収集している学齢期のエピソードについても、同様な観点からプロトコル分析を進める予定である。 それらの結果を総括して、ふざけ・からかい行動の発達的変化について仮説を提示し、コミュニケーション行動としての発達的意義について教育的に提示したい。
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Causes of Carryover |
今年度は、乳幼児と養育者との関わりを定期的、縦断的に映像データとして収集することと並行して、本研究の定義にあてはまるふざけ・からかい行動のエピソードを抽出しプロトコル分析を行った。そのため、研究協力者への謝金と、プロトコル分析の際の人件費が主な支出となっている。 乳幼児期については、エピソードにおける発話プトロコルやノンバーバルサインの丁寧な書き起こしにより、詳細なデータは蓄積しつつある。2020年度は、既に書き起こされている学童期のエピソードと乳幼児期のエピソードとの比較検討についても進めていく予定である。 また、先行研究のみでなく、学会や研究会への積極的な参加を通してエピソード分析のための新たな知見得るとともに、研究発表を行っていく予定である。そのため、2020年度は、旅費や学会発表の際の費用が主な支出となる予定である。
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